007/ドクター・ノオ
2003/11/30
Dr. No
1962年,イギリス,105分
- 監督
- テレンス・ヤング
- 原作
- イアン・フレミング
- 脚本
- リチャード・メイボーム
- バークレイ・マーサー
- ジョアンナ・ハーウッド
- テレンス・ヤング
- 撮影
- テッド・ムーア
- 音楽
- ジョン・バリー
- 出演
- ショーン・コネリー
- ウルスラ・アンドレス
- ジョセフ・ワイズマン
- バーナード・リー
- ピーター・バートン
- ロイス・マクスウェル
ジャマイカのクラブでカードをしていた中佐が連絡のため車に戻ると、そこに待ち伏せていた男たちに殺された。そして続いて、無線通信を行おうとしていた女が殺され、ファイルが盗まれた。じつはふたりはジャマイカに潜入していた英国の諜報部員であった。彼らの死の真相を突き止め、宇宙開発に対してなされる妨害電波の謎を突き止めるためジャームズ・ボンドがジャマイカに派遣されることとなった…
007シリーズの記念すべき第1作。派手な秘密メカもなく、決まったボンドガールもいないが、女ったらしのキャラクターとテーマ曲はすでに固まったトレード・マーク。今見ればいかにも「古典」という感じ。
映画の前にオープニングが格好いいなぁと思う。果たしてこの作品を作る時点でシリーズ化の意図があったのかどうかはわからないが、インパクトのあるオープニングと音楽にこのシリーズが40年も続くシリーズになってしまう理由の一端が見える。そのオープニングに加え、“00”という殺しのライセンスの設定、そして後のボンドカーであるスポーツカーによるカーチェイス。確かにこれはこれまでのスパイ映画とは一線を画した、新しいスパイ映画であったのだろうと感じさせる格好の良さを持っている。
そして、ショーン・コネリーも格好いいわけだが、キャストのほうはヒットシリーズとなった今とは確実の感のあるキャスティングになっている。後のボンドガールの美女たちも美人ではあるけれど、今ひとつスター性が感じられない。その中でもメインの初代ボンド・ガールというべきウルスラ・アンドレスは『007/カジノロワイヤル』(原作は正当なイアン・フレミングの作品だが、版権の都合上パロディとして作られてしまった映画)で007のひとりとして出演している。などというエピソードが出てきてしまうのも007シリーズの面白いところである。
さて、映画のほうは至極まっとうなスパイものである。すごい秘密兵器は出てこないが、当時の科学的な情報としては最先端を行っていた月ロケットと原子力とを組み合わせ、少しSF的な味わいを出している。このあたりは当時の時代の風潮という気もするし、原子力(放射能)に対する認識の甘さというのもこの時代の映画に共通する風潮だ(あんなペラペラの服着て、冷却水がある水槽の間近にいて、長生きできるとはとても思えない。あるいは、水で洗っただけで体の放射能が落ちるとは…)。
それは今見るとちょっとという感じの点だが、逆に悪役が東西対立の枠外にあるという設定は今から見ると新しい。当時といえば冷戦真っ最中。スパイといえば相手側の陣営の情報を知ることがすべてのような時代だった。そんな中で、今から言えばひとりのテロリストを相手にしてスパイが活躍する。その設定はかなり新しい。そんなこともあって物語展開は非常にスリリング。序盤の誰が敵で誰が味方かという状況がわからないまま展開されるあたりが特に面白い。その後は007が殺されないことはわかっているから、どのように危機を乗り越えるのかという展開が面白みなわけで、そんな中でどうにもこうにも余裕綽々なボンドをショーン・コネリーが見事に演じている。このポーカー・フェイスこそがボンドらしさ。敵とわかっている女を抱き、自分を殺しに来るやつを待ち伏せる。相手の攻撃に身をさらし、それでもたやすくかわしてしまう。うーん、マンダム。