バースデイ・ガール
2003/12/10
Birthday Girl
2002年,アメリカ,94分
- 監督
- ジェズ・バターワース
- 脚本
- トム・バターワース
- 撮影
- オリヴァー・ステイプルトン
- 音楽
- スティーヴン・ウォーベック
- 出演
- ニコール・キッドマン
- ベン・チャップリン
- ヴァンサン・カッセル
- マチュー・カソヴィッツ
真面目な銀行員のジョンは結婚相手を求めて、“ロシアから愛を込めて”という出会い系サイトにアクセスする。そして、花嫁としてナディアという女性を呼び寄せ、空港に出迎えに。しかし、ナディアは英語がまったくわからないようだった。ジョンはクレームをつけようとするが、電話はつながらず、そのうち徐々にナディアに愛情を感じるようになっていく。しかし、ナディアがたどたどしい英語で「今日、誕生日」と言った日、事態は一変してしまう…
ニコール・キッドマン、ヴァンサン・カッセル、マチュー・カソヴィッツという不思議な3人がロシア人を演じるサスペンス。映画を作ったのはバターワース兄弟という謎な三兄弟。
まず、アメリカ映画なのに舞台はイギリス。主人公はイギリス人。演じているのも本当にイギリス人のベン・チャップリン。それはまあいいとしても、なぜかロシア人がニコール・キッドマン。オーストラリア出身だけど、言われてみればなんとなく北っぽい顔立ちであるという気もしないではない。しかし、どこの国の人という以前にニコールはニコールでしかない。そこまでも100歩ゆずっていいとしても、他のロシア人がヴァンサン・カッセルとマチュー・カソヴィッツというのはどうだろう。このふたりのフランス人はどう見てもフランス人。ラテンの空気をプンプンに漂わせ、ロシア人だと言い張る。
こんな設定は観客を笑わせようとしているとしか思えないので、笑おうとするのだが、やっている本人たちはまったくもって真面目で、笑う隙もない。ある種のパロディなんだったらもっと笑う間があっていいようなものを、映画としてはひどくまっとうなサスペンスとして進んでしまう。あるいは安いラブ・ロマンスとして。
かといって、サスペンスとして面白いかと言われると、そうでもない。ロシアからわざわざやってきている割にはやることのすべてが小さい。そして犯罪の規模の割りにやることが回りくどい。結果的に得られるものを考えると、3人であれだけ苦労してやるほどのことじゃないだろうと思ってしまう。しかも手際が相当悪い。
ということで、サスペンスをだしに使ったラブ・ロマンスかと考えてみるけれど、それにも相当無理がある。果たしてロシアからやってきた、明らかにだまそうという魂胆でやってきている、言葉の通じない女性を、いくらニコール・キッドマンだからといって好きになれるだろうか? そんなお人よしなジョンが否定されてしまったら物語の前提が覆されてしまうということで、ジョンはあらゆる人によって「いい人」と描写される。基本的にはプロットに関係ないこの「いい人」という表現の連発で何とかこの映画は映画として成り立っているといっていいのかもしれない。
不必要に長いと思われる、ジョンの査定のシーン、同僚との会話のシーン、そのあたりも実は重要で、何だかんだいって後々響いてきたりするのだ。このあたりのプロット回しにはなかなかのうまさを感じるが、あくまで綱渡りのわたり方がうまいというだけで、もっと太いしっかりとした物語を作れよという話にもなる。
ということで、サスペンスとしてもラブ・ロマンスとても、今ひとつなこの映画。そしてやはりコメディとしても成立し得ないこの映画は、やはりニコール・キッドマンを見るしかない。どのくらいの制作費がかかった映画化は知らないが、その制作費の半分以上はニコールのギャラに回ってるんじゃなかろうかと思う。このバターワース兄弟、果たして何者?