トランスポーター
2004/1/13
Le Transpoteur
2002年,アメリカ=フランス,93分
- 監督
- ルイ・レテリエ
- コリー・ユン
- 脚本
- リュック・ベッソン
- ロバート・マーク・ケイメン
- 撮影
- ピエール・モレル
- 音楽
- スタンリー・クラーク
- 出演
- ジェイソン・ステイサム
- スー・チー
- マット・シュルツ
- フランソワ・ベルレアン
- リック・ヤング
プロの運び屋“トランスポーター”であるフランクは「契約は変えない」「名前は聞かない」「依頼品は開けない」という自ら定めたルールに従って仕事をし、今回も銀行強盗たちを無事、警察の手から逃れさせた。しかし、次の仕事で人間と思われる依頼品を開けてしまい、そこから面倒に巻き込まれてしまう…
サスペンス・アクションに少しの笑いを織り交ぜたリュック・ベッソンのいつものスタイル。ストーリーを追う限り特に新鮮味はないが、映像が小気味よく、面白く見ることができる。
いきなりの見せ場はカーチェイス。リュック・ベッソンは何故こんなに車が好きなのか。リュック・ベッソンが関わった作品で唯一シリーズ化されたのが『TAXi』であり、その『TAXi』シリーズは作品ごとに車種へのこだわりがあって、まさに車マニアらしい作品。
このように車に異常な愛着を示すリュック・ベッソンは脚本でしかないのに、映像のつくりにまで車マニアな感じがよく出ている。冒頭のカーチェイスのシーンでも、ただ車の動きを折っているだけではなく、ギアチェンジする手やクラッチを踏む足をクロースアップで挟み込み、あたかも自分がその車に乗っているかのように見せるテクニックを駆使している。これによってカーチェイスシーンには非常にいいリズムが生まれる。そして、愛車をいとおしげに洗車するフランクの姿も車マニアの姿を端的に表している。
カーチェイス以外のアクションシーンはといえば、ここはコリー・ユンの独壇場。ワイヤーなども使いながらカンフー・アクションが炸裂。これもすでにリュック・ベッソンの得意技の一つとなってしまった。この辺りを見ると、リュック・ベッソンはいい意味でも、悪い意味でも“世界映画”を撮っているという気がする。アジアの面白いものを引き上げて、生まれたヨーロッパを舞台にして、しかし最終的にはアメリカ/ハリウッドのスタイルに乗っかって映画を作る。それがいいか悪いかをとりあえずは問わないとすれば、彼の製作する映画はどれも気楽に楽しめるいい映画であると思う。
カーチェイスとカンフーの小気味よいアクションに支えられてこの映画のプロットはサスペンス・アクションの一つのパターンから出ない。地味なヒーローとひとりの正義感の強いヒロイン、クールな悪役。ヒーローは地味ではあるが、自分に絶対の自信を持ち余裕がある。この“余裕”がこのようなアクション映画の必須条件であり、どこか『007』を思わせる。しかし、『007』パターンをなぞるというよりは007が演じるべきところにどう見ても二枚目のヒーローには見えないジェイソン・ステイサムを起用することでひねりを加えていると見ることもできる。このあたりもリュック・ベッソンのしたたかなところ。ハリウッドと似てはいるが、どこかが違うリュック・ベッソン・システムとでもいうべきものを生み出そうとしているかのようだ。
ともかくプロットは適度にハラハラ感があり、しかし主張過ぎず、アクションを引き立てる。登場人物のキャラクターの作り方も余分な説明を排してスピード感を邪魔しない。なんだかそこだけ浮いてしまった感じがしてしまうカーアクション以外のアクションにもう少しオリジナリティが感じられるといいが、それでも十分に楽しめるとは思う。