パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち
2004/1/25
Pirates of the Carribbean: the Curse of the Balck Peal
2002年,アメリカ,119分
- 監督
- ゴア・ヴァービンスキー
- 脚本
- テッド・エリオット
- テリー・ロッシオ
- ジェイ・ウォルパート
- 撮影
- ダリウス・ウォルスキー
- 音楽
- クラウス・バデルト
- ハンス・ジマー
- 出演
- ジョニー・デップ
- オーランド・ブルーム
- キーラ・ナイトレイ
- ジェフリー・ラッシュ
- ジョナサン・プライス
総督の娘エリザベスは航海の途中で流されている少年を見つける。その少年が首から欠けていた海賊のペンダントをくすねたエリザベスはそれを大事に持っていた。時はたち、エリザベスは美しい娘となり、救われた少年ウィルは鍛冶屋となっていた。その平和な港町にバルボッサ率いるブラック・パール号に乗った海賊たちが現れ、街を略奪した。エリザベスは船長と交渉するため船に乗り込んだが…
ディズニーランドの人気アトラクション“カリブの海賊”を映画化するというかなりウルトラCな感じのことをやってしまったディズニー映画。基本的には普通の映画だが、ジョニー・デップに救われている。
ディズニーの映画はほかの映画とは根本的に異なっている。この映画も先頭シーンや殺し合いのシーンはあるが、それは決して残虐なものにはならない。ロマンスはあるが性描写はない。それがディズニー映画であり、この映画は紛れもなくディズニー映画である。それはつまりいわゆる大人の映画ではありえないということで、子供向けのアドベンチャー、ロマンスということになる。
なので、この映画はかなり平穏なアドベンチャーになる。海賊たちが一種のゾンビであるという設定の面白さはあるが、それほど奇想天外な展開があるわけでもなく、特撮技術の迫力でなんとかハラハラドキドキという感じを出していて、先がどうなるのかというドキドキ感とは違うものなのだ。
それでもこの映画が面白く仕上がってるのは、ジョニー・デップと彼が演じるキャプテン・ジャック・スパローのキャラクターに依るところが非常に大きい。ジャック・スパローはヒーローであると同時に道化である。すごいことをするにもかかわらず面白いことをするのだ。これは典型的なトリックスターの形である。あるいはトリックスターの典型から性的な要素を取り除いたものというべきか。
トリックスターとはいたずら者、ペテン師とか言われるが、それほど軽いものではなく、現在ある秩序から外れたところに存在し、狡猾なトリックで秩序のうちにあるものをだまし、その秩序を内側から破壊するような人物である。そこにカリスマが備わるとある種の文化的英雄となって、新たな時代を切り開く。
そこまでのカリスマはないにしても、ジャック・スパローには小さな集団をまとめるくらいのカリスマはある。そして彼にひきつけられる人たちは根っからの悪人ではなく、正義感だったり、小さなトリックスターだったりする人たちなのだ。正統派のヒーローではない人たちが主役となるような冒険譚ではトリックスター的な人物が主役になることが多い。身近な例で言えば、ルパン三世なんかもトリックスターの仲間だと考えることもできるし、義賊といわれるような人々は大体がトリックスター的な要素を持っているものだ。それは、どこかにアンチ・ヒーロー的な部分も持っていて、それが政党はヒーローの空々しい物語とは違う魅力を持つということなのである。
そして、そんな人物をジョニー・デップは見事に演じる。ジョニー・デップはシリアスな演技もコミカルな演技もこなすことができ、決して派手ではないが雰囲気を持っている。それはまさにトリックスターにふさわしいし、もしかしたらジョニー・デップ自身が役者の間、あるいは映画界におけるトリックスターであるのかもしれない。ジョニー・デップは自分で売れない作品を監督したり(成功とはいえなかったが)、『デッドマン』のような意欲的な作品に出たり、『GO!GO!LA』では短い出演時間で効果的な役回りを演じてみたりと、いろいろといわゆるスターの型から外れるようなことを試している。
その組み合わせが、この映画を見事に仕上げる。すでに続編が制作されているということだが、それもうなずけるジャック・スパローの魅力である。