ケミカル51
2004/2/21
The 51st State
2002年,アメリカ=イギリス=カナダ,92分
- 監督
- ロニー・ユー
- 脚本
- ステル・パヴロー
- 撮影
- プーン・ハンサン
- 音楽
- ヘッドリラス
- 出演
- サミュエル・L・ジャクソン
- ロバート・カーライル
- エミリー・モーティマー
- リス・エヴァンス
- リッキー・トムリンソン
- ミート・ローフ
大学で薬学を学んだエルモは、薬剤師になることはかなわず、ドラッグ生成人をしていたが、ある日ついにヘロインの51倍の効果を持つ究極のドラッグ“POS 51”を開発した。エルモは自分が属するマフィアを裏切って、イギリスのリヴァプールにドラッグを売りに行く。リヴァプールでは熱狂的なサッカーファンのフィーリクスが彼を出迎えるのだが…
イギリスを舞台にした風変わりなクライム・コメディ。監督は香港でコメディを撮ったあとハリウッドに移り、『チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁』を撮ったロニー・ユー。
なんだこりゃ!ですね。イギリスのコメディとハリウッドのクライム・アクションを無理やりくっつけてしまったチャンポン映画です。サミュエル・L・ジャクソンにロバート・カーライルということで、いったいどんな風に2人が絡んでいくのかと思ったら、基本的には2人は別のことをやっている。サミュエル・L・ジャクソン演じるエルモはドラッグを売るために奔走し、ロバート・カーライル演じるフィーリクスはサッカーを見るために奔走する。その間にエミリー・モーティマー演じるダコタが入ることで何とか2人の関係性というのは成り立っているけれど、そこには普通はお金を中心とした利害関係で結ばれる犯罪のパートナーという関係とは違う関係が成り立っている。結局のところいったいなんで2人は協力しているのか? と思ってしまうような展開なわけです。
で、その根底にあるのはイギリス人のおおらかさでしょう、多分。監督のロニー・ユーは香港出身、つまりイギリスの植民地である香港からアメリカに渡った。その彼がアメリカをイギリスをどう思っているかはわからないけれど、「イギリスなんてアメリカの51番目の州だ」などといいながら、実はアメリカのルーツがイギリスにあるということを匂わせる。アメリカに恋人をとられたフィーリクスはアメリカを嫌う(その名前がダコタってのもねぇ…)けれど、別にエルモを嫌っているわけではなく、それはそれでと思っているというのがおおらかさなのかもしれません。そのことでこの映画にはハリウッドのギャング映画(それがコメディであっても)にあるぎすぎすした感じが欠如して、なんともゆるーい映画になっているわけです。が、イギリス/アイルランドのコメディのゆるさまではいっていない。なんだか、サミュエル・L・ジャクソンのイギリス映画での居心地の悪さを撮ったような、不思議な面白さがあります。それでサミュエル・L・ジャクソンが面白く見えてきたりするんだから、この監督はうまいのか、下手なのか…
まあ、コメディとしてはそれなりに面白いし、プロットもなかなかねられていてよろしい。ので、見て損はないでしょう。