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ライフ・オブ・デビッド・ゲイル

2004/3/1
The Life of David Gale
2003年,アメリカ,131分

監督
アラン・パーカー
脚本
チャールズ・ランドルフ
撮影
マイケル・セレシン
音楽
アレックス・パーカー
ジェイク・パーカー
出演
ケヴィン・スペイシー
ケイト・ウィンスレット
ローラ・リーニー
ガブリエル・マン
マット・クレイヴン
preview
 ニューズ・マガジン社の記者ビッツィー・ブルームは4日後に死刑を控えた死刑囚デビッド・ゲイルから独占インタビューのオファーを受ける。デビッド・ゲイルは元大学教授で、死刑反対運動の指導者の一人だった。「なぜ私が」と疑問に思いながら、ビッツィー・ブルームはテキサス州の刑務所に向かい、デビッドの話を聞くうち、彼の「人生」にぐんぐん引き込まれていく。
 アラン・パーカー監督、ケヴィン・スペイシー主演のサスペンス・ドラマ。死刑という問題を映画の中心に据え、それをサスペンス仕立てで見せるというなかなか凝った作品。謎解きとしてはそれほど難解ではないですが、なかなか考えさせられる作品。
review
 なんだか、大きな仕掛けがありそうで、実はない。最初、ビッツィーの車が故障し、何かを持って走るシーン、これは単純にプロローグかと思いきや、これも実はちょっとした謎になっている。しかし、あくまでちょっとした謎。大きな謎ではない。映画のほうは自分の無罪を控えめに主張するデビッド・ゲイルの話をもとに、真犯人は誰かを探っていくということで、大きな「謎」をめぐる話であるように思えるし、映画は実際そのようにして展開していくのだが、それにしては謎解きが簡単すぎる。大まかなからくりは映画の中盤で気づいてしまって(気づきやすいような仕掛けになっている)、そこから先は大きな謎解きは映画の中心とはなりえず、細部の疑問を解いていくこと(つまり証拠集めのようなもの)に注がれる。
 そして、最後には大きな謎も、その細部も解かれて、すっきり解決、といくのだけれど、そこで全てがすっきりするわけではなく、まだまだ様々な小さな謎が残る。あまりにたくさんの謎を投げかけすぎたために、解ききれなかったのか、それともそこに何らかの含意があるのか。ひとつ、映画のネタにあまり関係してこない謎で残っていくものがあるが、それは「なぜベッツィー・ブルームがインタビュアーに指名されたのか」ということである。最後まで見ても、はっきりとした理由は見当たらない。記者としての腕はそこそこあるようなので、そのそこそこというところと速報性のない雑誌という媒体の記者である。ということくらいしか理由は見当たらない。そんな記者ならアメリカじゅうにゴマンといるだろうから、いったいなぜ… という疑問が残る。まあ、たいしたことではないといえばそれまでだが、最初に「なぜ?」という謎がかけられているだけに、最後まで解かれずに残ると、ちょっと引っかかる。
 この映画はそんな小さな謎がいくつか残るのである。

 それを考えてみると、そこには映画の「真犯人探し」という大きな謎より、さらに大きな謎である「死刑」の謎がずっと映画の背後に横たわっていたということがあるのかもしれない。その謎はもちろん映画によってとかれることはない。それは謎といっていいのかわからないが、とりあえず大きな「疑問」としてわれわれの中に残る。死刑はなぜ存在するのか、法によって人を殺すということはどういうことなのか。
 死刑に賛成か反対かということはおいておくにしても、死刑というのが法による殺人である以上、それはつまり国民であるわれわれ全員がその殺人の片棒を担いでいるということだということは意識しておかねばならない。その重荷を背負ってでもその死刑囚を死刑にするかどうか、を考えれば自分が死刑に賛成なのか反対なのかが見えてくるのだと思う。
 そう考えると、少なくとも死刑が行われるときには事前に知らせてほしいし、その詳細(日時、方法、死刑囚の犯罪の内容、裁判の手続きなど)に容易にアクセスできる方法が担保されているべきだと思う。そのような透明性という意味では、テキサス州のシステムは非常にわかりやすい。州民は自分の責任によって行われる死刑について多くのことを知ることができる。そしてその上で賛成する人と反対する人がいるというのもうなずける。
 この映画はどうも死刑反対論で、それを裏付けるというか、賛成論の怖さを示すために市民のインタビュー風の映像を入れたりしているわけだが、ここまで明確に一方の側に加担するというのはちょっと失敗だったかもしれないという気がする。私も基本的には死刑に賛成ではないが、映画としてはもっとニュートラルな姿勢をとって、観客が自分にひきつけて考えられるという方法をとったほうがよかったのではないかと思ったりした。
 そのために真犯人をわかりやすくして、たくさんの小さな謎を追わせたのではなかったのか? 観客が死刑というものについて考える時間を与えようとしたのではなかったのか? と考える。
 いい映画ではあるけれど、もう少し観客を信用してもよかったのではないかと思う。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ2001年以降

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