エンジェル・アイズ
2004/3/3
Angel Eyes
2001年,アメリカ,103分
- 監督
- ルイス・マンドーキ
- 脚本
- ジェラルド・ディペゴ
- 撮影
- ピョートル・ソボチンスキー
- 音楽
- マルコ・ベルトラミ
- 出演
- ジェニファー・ロペス
- ジム・カヴィーゼル
- ジェレミー・シスト
- テレンス・ダッション・ハワード
シカゴ警察のシャロンは事故現場で一人の重傷者を必死で励ましていた。それから1年、シャロンは相変わらず警察の仕事をこなしていたが、仕事が全てで恋人もできず、何かもやもやする日々を送っていた。そんな中、謎の男がシャロンを見つめるようになる。そして、ある日ダイナーを襲撃したギャングを追っていたシャロンが窮地に立たされていたところを、その男が助けるのだが…
ジェニファー・ロペスを主役としたロマンティック・アクション・ドラマ(何じゃそりゃ?)。設定としてはなかなか面白いが、いまひとつ焦点が定まらないという気がするのも確か。
前半は謎の男キャッチの謎で観客を引き込むことができる。しかしそのキャッチの謎はあまりにわかりやすくて、映画も中盤を迎えるころにはこれっぽっちも謎めいた人ではなくなってしまう。にもかかわらず、ジェニファー・ロペス演じるシャロンはキャッチの謎に引っ張られていく。この辺りのギャップがこの映画を台無しにしてしまう。せっかくキャッチの謎によって観客はシャロンに近づいたのに、このギャップによってシャロンから遠ざかってしまう。そうすると、映画との距離も広がって、ほかの問題もどうでもいいような気がしてしまい、描かれていることに対して入り込めなくなってしまう。
これはハリウッド映画であり、ジェニファー・ロペスはスターであり、つまりこの映画はジェニファー・ロペス演じる主人公に自己を投影して、ある意味では非日常的な世界を楽しむための映画であるはずだ。そして、その準備に映画の序盤で成功していながらむざむざとそれを台無しにし、不必要な客観性を映画に持ち込んで、つまらない映画にしてしまう。これはあまりにもったいない気がする。 そういう意味では、ジェニファー・ロペスのブロンドの違和感も不必要だし、むしろ邪魔なものである。そこに感じる不自然さはわれわれをスターを眺める一般人の立場に引き戻し、映画の(夢の)世界に入り込むことを阻害する。そんなことばかりがこの映画にはあって、どうにもすっきりしないのである。
それとも、この映画の狙いはそんなハリウッドのスペクタクルを回避することにあったのだろうか? シカゴの街で起きる日常的な出来事、われわれにもいつかおきるかもしれないことを描くことを目指していたのだろうか。もしそうだとしたらならば、物語のつくりがあまりに幼稚すぎる。事故にあって記憶を失うなんてことは、話にはよく聞くにしろ、決してリアリティを持って迫ってくる話ではない。
つまり、スペクタクルとしても中途半端、リアルなドラマとしても中途半端ということになってしまったわけだが、もしかしたら、前半でぐっと映画に入り込めば、最後までその勢いでいけるのかもしれないという可能性も感じさせる。
そう感じさせるのは、キャッチ役のジム・カヴィーゼルはなかなかいい味を出しているということだ。スターであるジェニファー・ロペス(この映画と『ウェディング・プランナー』でラジー賞にノミネートされてしまったが、この映画の限りではどうもいかんというのはジェニファー・ロペスの責任というよりは演出の責任であるような気がするけれど)よりも、このジム・カヴィーゼルを中心に見ていけば、なかなか面白のかもしれない。
この人これからスターになるのかな?