インファナル・アフェア
2004/3/10
無間道
2002年,香港,102分
- 監督
- アンドリュー・ラウ
- アラン・マック
- 脚本
- アラン・マック
- フェリックス・チョン
- 撮影
- ライ・イウファイ
- アンドリュー・ラウ
- 音楽
- コンフォート・チャン
- 出演
- アンディ・ラウ
- トニー・レオン
- アンソニー・ウォン
- エリック・ツァン
- サミー・チャン
- ケリー・チャン
1991年、警察学校に入ってきた若者たち、教官はその中のひとりヤンの優秀さに目をつけ、学校を退学させマフィアに潜入させる。そのことを知っているのは警察内でもわずかふたりだけ。一方、その同じ警察学校にいたラウはマフィアのボスによって警察学校に送り込まれていたのだ。それから10年、ふたりはそれぞれの組織の中で頭角を現し、重要な地位についていた…
アンディ・ラウとトニー・レオンという2人のスターの競演と、練りに練られたプロットの面白さで香港で大ヒットしたアクション映画。日本でも2003年ブルーリボン賞外国語映画賞を受賞。さらに、ハリウッド史上最高額でリメイク権が買われたという話題の作品。
これは非常に古典的な映画なのかもしれない。冒頭で主だった登場人物たちを登場させ、その関係性を明示しておく、そして10年後にジャンプするが、それが10年後であることも明確であり、人物の同一性も10年間に起こったことの概略もすっきりと明示される。その上でドラマが展開され、ひとつのじっくりと練られたプロットをテンポよく進めていく。それは誰が見てもわかる映画、それはまさに古典的なハリウッド映画のような映画である。
だからといって古臭いということではなく、ハリウッド映画とは多かれ少なかれこういった古典的な文法に幾許かは縛られているのであり、そんな文法に縛られた映画を見続けてきたわれわれ(と映画制作者)はそのような文法にしっかり乗った映画を見ると無意識に安心し、たやすくその映画に浸ることができるのだ。次から次へと展開していくドラマに心を奪われ、ただただその先の展開がどうなるのかという好奇心に引っ張られて映画の世界にはまっていく。そこでは予想を裏切られる驚きと、予想が当たった満足感とがかわるがわる現れて、われわれを飽きさせない。そんな映画を見るとわれわれはわくわくして、観終わってみればただただ「面白かった」という感想だけが残る。
だからこの映画は面白い。その面白さは、この映画が観ているものに批判する隙を与えないテンポで展開されることからくる。あとでゆっくり振り返ってあらを探せばそんなものはいくらでもある。しかし、映画を見ている間はあまり(まったくではないが)気にならない。そのような映画の快楽がこの映画にはあるのだと思う。
ハリウッド映画は古典的な文法に縛られている、と書いたばかりではあるが、他方でハリウッド映画はあるときから、そんな文法を覆すことで新たな面白さを生み出そうとしてきたという面もある。それはおそらくインディペンデントという形で始まり、いまやメインストリームの一部になっているのだと思う。いまのほとんどのハリウッド映画は、古典的な文法に部分的に縛られながら、しかしそれを覆すことをしている。
それに対して、香港映画は古典的なハリウッド映画の文法を輸入し、それを洗練させていった。一部の映画はもちろんその文法から外れていき、アメリカのインディペンデント映画と相互作用を起こしただろうが、中にはこの映画のようにそのスタイルをどんどん洗練させていって、ハリウッドとは違う形で洗練させていったものもあるということなのかもしれない。
これ以上詳しく書くとどんどんマニアックになっていってしまうような気がするけれど、簡単に言えば「物語の筋」の部分をとことん突き詰めていき、純粋な物語映画になったようなそんな映画が香港にはあるのかもしれない。
古典的なハリウッド映画(例えばフィルム・ノワール)が好きで、最近のハリウッド映画は小手先ばかりでつまらんと思っている人は、向き直って香港映画を見てみると、映画の純粋な喜びが蘇ってくるのかもしれません。