モンキー・ビジネス
2004/3/17
Monkey Business
1952年,アメリカ,97分
- 監督
- ハワード・ホークス
- 原作
- ハリー・シーガル
- 脚本
- ベン・ヘクト
- チャールズ・レデラー
- I・A・L・ダイアモンド
- 撮影
- ミルトン・クラスナー
- 音楽
- リー・ハーライン
- 出演
- ジンジャー・ロジャース
- チャールズ・コバーン
- マリリン・モンロー
科学者のバーナビーは会社の研究所で若返り薬の開発中で、そのことで頭がいっぱい。妻とパーティーに行くはずだったが気もそぞろでやめてしまう。しかし、とある方法を見つけた彼は翌日会社で実験をする。そして、完成した薬を自分を実験台にして試すと、何と近眼も直り、関節の痛みも消えて、気分もまるで二十歳のようになったのだが…
ハワード・ホークス監督でケイリー・グラントとジンジャー・ロジャースが主演のテンポよいコメディ。マリリン・モンローはブレイクする直前で、まだ準主役。
映画の冒頭で、ケーリー・グラントが扉を入ってこようとすると「ケイリー、まだだ」というセリフがあって、タイトルクレジットに戻る。これはこの映画が映画であり、そしてコメディであることを一発でわからせるとても面白い仕掛けであると思う。映画は一般的にはそれが作り物であることを意識させないようにするものだが、このころのハリウッド映画にはこの映画のように作り物であることを意識させつつ観客を楽しませるという映画が結構ある。その大部分はもちろんコメディで、ハワード・ホークスはそんな軽妙なコメディを作るのがうまいので、この映画もそんなホークスらしさが出ていていい。
ということなので、全くもってただただ見て楽しむだけというのがこの映画の見方であり、それ以上のことは全く考えてはいけない。リアリティがないとか、設定がありえないとか、展開に無理があるとか、そんなことを言ってしまうと、ちっとも楽しめない。そんな映画である。
そして、そのように余計なことを考えないようにしてこの映画を楽しもうとしてみると、ケイリー・グラントとジンジャー・ロジャースがとてもいい。ケイリー・グラントは本当に多彩な役者だと思う。イメージとしてはヒッチコックなどのサスペンス作品でのシリアスな演技がまずあるので、コミカルな演技というのは最初違和感があるが、芸達者なのですぐになじめるし、笑える演技をする。一方、ジンジャー・ロジャースといえば、フレッド・アステア、そしてミュージカルというイメージなので、もともと軽妙な感じがしてコメディにも違和感はない。
そんなふたりが演じる若返りの演技は本当に軽妙で面白い。まるで舞台のようなわざとらしさというか大げささはあるけれど、ふたりの呼吸もぴったり、ふたりとも多分40代だと思うけれど、それを感じさせない軽快な動きである。体も心も若返るという演技をするには自身も本当に若くてはいけないのだなぁ、などと感心する。
と書いているのは、そんなふたりの演技以外は特に見所もないからで、しかしそんなふたりを軽快に動かしているさりげない演出もさすがはハワード・ホークスというところなのだろうと思う。作り物であることを意識させつつ、しかし演出を意識させないというのは実はすごい技術なのかもしれないが、結局のところそんなことを考えずに見る映画なのだから、まあそんなことはいいかなという感じでもある。
マリリン・モンローはまだまだ若く、ぴちぴちした感じ。ホクロもなくて、お色気ムンムンというよりは非常にフレッシュな感じがしてそれはそれでいい。けれど、この映画の主役はやはりジンジャー・ロジャースでマリリン・モンローは引き立て役に過ぎないというのも確かなところではある。