ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
2004/3/20
The Lord of the Rings: The Return of the King
2003年,ニュージーランド=アメリカ,203分
- 監督
- ピーター・ジャクソン
- 原作
- J・R・R・トルーキン
- 脚本
- ピーター・ジャクソン
- フラン・ウォルシュ
- フィリッパ・ボウエン
- 撮影
- アンドリュー・レスニー
- 音楽
- ハワード・ショア
- 出演
- イライジャ・ウッド
- イアン・マッケラン
- リヴ・タイラー
- ヴィゴー・モーテンセン
- ショーン・アスティン
- ジョン・リス=デイヴィス
- クリストファー・リー
- オーランド・ブルーム
- ビリー・ボイド
- ドミニク・モナハン
- アンディ・サーキス
「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の最終章。
指輪を捨てるためのたびを続けるフロドは依然としてサムとスメアゴルとともに険しい山道を進む。スメアゴルは腹に一物抱えている様子であり、サムはそれをさかんに警戒するが、フロドはスメアゴルを信用する。
一方、ローハンを死守したガンダルフ、アラゴルンらはサルマンが支配するオルサンクの塔を陥落したメリーとピピンのところに赴く。そして、ローハンに戻り、危機が迫るゴンドールに援軍を送るかどうかを議論し、先ずガンダルフがゴンドールに赴くことに決まるのだが…
前2作と比べると、最終章であるだけに対決のシーンに多くの割合が割かれ、圧倒的な戦闘シーンがメインという感じになる。その迫力はさすがのもので、アカデミー賞11部門受賞も納得。
物語的には『二つの塔』が終わった段階で最後まで大体のめどがついたという感じで、まあまあそのとおりに進んでいく。結局のところ、あとはフロドが指輪を捨てに行くというのと、ゴンドールを守ることくらいなので、仕方がないといえば仕方がないのだが、とりあえず物語が映画の主役にはなりえないということだ。
なので、映画としては物語り以外の部分で盛り上げていくことになる。第1作では物語の面白さで映画を引っ張り、第2作では細部のこだわりで観客を引きこんだ。そしてこの第3作では戦闘シーンの圧倒的な迫力で観客を圧倒する。これまでに出てきたすべての敵キャラが大集合してゴンドールに攻めてくる。その迫力たるや、やりもやったりものすごいものである。
この戦闘シーンはかなりの長さがあるが、その長さを感じさせないだけの展開力がある。まずは圧倒的な数のオークがゴンドールを襲うのだが、ゴンドールには援軍がやってくることが期待できる。しかし、オークの側にもそれ以上の兵がやってくることが想定されているのだ。その兵力の変化によって戦況は刻々と変化し、戦い方も変わっていく。その展開の仕方がなかなか面白い。そして、視線は完全に中つ国の側に固定され、敵は敵、完全な悪役なのである。その完全に一方的な視線というのが観客をぐっと引き込んで、まるで戦闘の現場にいるかのような臨場感を与える。おそらくここだけで普通の映画2・3本分の予算が投じられているのだろうが、それに足るだけのすばらしいシーンになったと思う。
あとは、やはり10時間にもわたる物語の最後ということで感動させなければならんということになる。結末はずいぶん前から見えてきているので、結末によって感動することはないのだが、結末が訪れたあとのエピローグ的な部分がなかなか泣かせる。フロドとともに旅をするサムは第2作すでに主役を食ってしまった感があったが、この第3作でもフロドを上回るくらいの活躍をする。そして、感動を誘うのは主にサムなのである。サムはフロドに対して友情と主従関係との両方を抱え、謙虚でしかし勇敢なのである。そんな彼に感動しなくて誰に感動する、という感じ。映画の主役という意味ではサムこそが本当の主役だったのではないかと思う。
が、別に演技がすばらしいとかいうことはないので、アカデミーを取りざたされることはなかった。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズは結局、第1作でイアン・マッケランが助演男優賞にノミネートされた以外、役者が賞にノミネートされることはなかった。まあ、CGやスタンド・インが多用されているので、賞を上げるのはなかなか難しいということになるのだろうが、そんななか、第2作と第3作を見て、スメアゴル/ゴラムがかなりいいと思う。このキャラクターは基本的にはCGだけれど、この第3作の最初には人間の(あるいは人間的な)ものとして登場する。果たして彼(アンディ・サーキス)はスメアゴル/ゴラムとしてどれくらい演技をしているのか。というのが気になるところ。そして、ほとんどがCGだとしたらアンディ・サーキスには助演男優賞をもらう資格がないのか? という疑問が生じる。アカデミー賞が賞を与える役者っていったい何なの?
話はすっかりそれてしまったが、そんなゴラムにMTVムービー・アウォードは『二つの塔』に対して、ヴァーチャル演技賞という賞をあげている(『王の帰還』は2004年6月発表の第13回の対象)。さすがMTV、そんな賞いつからあったんだ? という感じだけれど、今後はそういった事態も増えてくるような気がするので、アカデミー賞のほうも何か考えないと、という気がしてくる(私が言っても仕方ないですが…)。