自由の幻想
2004/5/16
La Fantome de la Liberte
1974年,フランス,104分
- 監督
- ルイス・ブニュエル
- ジャン=クロード・カリエール
- 脚本
- ルイス・ブニュエル
- ジャン=クロード・カリエール
- 撮影
- ルイス・ブニュエル
- 音楽
- エドモン・リシャール
- 出演
- ジャン=クロード・ブリアリ
- モニカ・ヴィッティ
- ミシェル・ピコリ
- ジャン・ロシュフォール
- パスカル・オードレ
物語は細い糸のようなつながりによって次々に繋がっていき、歴然とした脈略はない。しかし、「自由の幻想」というタイトルになっていることからも、その脈略のないエピソードの連なりがなにか「自由」にかかわるものであるらしいことはわかる。しかし、それ以上はここの観客の想像力にゆだねられる。宗教的なモチーフも、エロティックな変態性も盛り込まれ、ブニュエルらしさはてんこ盛りだが、この短い時間にこの作品のすべてを理解するのは到底無理なような気がする。
この作品を、良しとするか、悪しとするか、それはその人の映画を観るスタンスの問題だと思う。映画というものをその上映時間という短い時間で完結するものと考えるならば、この映画は複雑すぎる。100分あまりという短い時間でこの映画を理解することは到底無理だと思う。しかし、映画というものを一過性のものと考えず、繰り返し見ることによって味わうものだと考えるならば、この作品はじっくりと味わうに足る作品であるということになるだろう。
私は、映画は何度も見ていいものだけれど、観るたびにその映画は変化するものである。つまり、まったく同じ映画は二度と見ることができないと考える。とするならば、今回見た限りでは、この映画は私には消化しきれず、「おもしろーい!」と手放しでほめることができる映画ではなかった。しかし、その難解さや、あまりにてんこ盛りなほのめかしを観れば、この映画が、もう一度観ればがらりと印象が変わる映画であるだろうことは予想がついた。
なので、映画を見終わった時点で思考停止してしまって、この映画について本当の感想を書くことはできない。この映画はそのもの心の中で棚上げされてしまって、この映画がいったいなんであるのかという結論を出すことはできなくなってしまった。
なので、どうでもいいようなことばかり書くけれど、ブニュエルの映画を見ていると、どうでもいいと思えるようなことにこそ、真実が含まれているのではないかということも言える。
この映画にはいわゆるブニュエル映画のエッセンスというものが数多く含まれていて、しかもそれが短い断章によって区切られる。一人の登場人物の重なりといった細い糸によって繋がっていくその断章は一応それぞれに完結しており、しかもそのすべてが非常に不合理である。
それはブニュエル作品のミニチュア版という形なので、ブニュエルの作品の不合理さに最後まで耐えられないという人が、ブニュエルになれるためにはいいのかもしれないなどと思う。
そして、それぞれの断章を見ると、宗教的なモチーフあり、変態性欲の話あり、とブニュエルらしさがほとばしる。そのそれぞれの意味はまったく理解できなくとも、これがブニュエルなんだという感覚はなんとなくつかめる。
そして、それらの断章が繋がることなく、あっという間に忘れ去られてしまうというのもブニュエルらしいというべきなのかもしれない。