フロム・ダスク・ティル・ドーン
2004/5/17
From Dusk Till Dawn
1996年,アメリカ,109分
- 監督
- ロバート・ロドリゲス
- 原案
- ロバート・カーツマン
- 脚本
- クエンティン・タランティーノ
- 撮影
- ギレルモ・ナヴァロ
- 音楽
- グレーム・レヴェル
- 出演
- ジョージ・クルーニー
- クエンティン・タランティーノ
- ハーヴェイ・カイテル
- ジュリエット・ルイス
- サルマ・ハエック
- アーネスト・リュー
砂漠の中にポツリと立つ酒屋、いつものようにそこを訪れた警官が闘争中の二人の銀行強盗ゲッコー兄弟に出くわす。兄弟は人質を連れたままモーテルに行くが、兄のセスが留守の間に弟のリチャードが人質を殺してしまう。今日中に国境を超えなくてはならない兄弟は元牧師家族を新たに人質にとり、彼らのキャンピングカーで国境に向かう…
タランティーノが脚本を書き、ロドリゲスが監督をしたB級映画。そして、当時「ER」で人気を博するTV俳優だったジョージ・クルーニーのスクリーンにおける出世作となった作品。
この映画の監督はロバート・ロドリゲスだけれど、影の主役はタランティーノである。脚本を書き、役者としてももっとも癖のある役を演じる。ロバート・ロドリゲスとタランティーノといえば、B級映画オタク仲間、そんなB級映画の嗜好が思いっきり出てしまったのがこの映画である。
出演者も、ハーヴェイ・カイテルがなんと言ってもB級くさい。見方によっては渋い役者という見方もできるのだけれど、タランティーノとからんでくると、あのたるんだ体がどうにもB級映画以外の何ものでもない。そして、ジョージ・クルーニー、このころはまだテレビから映画へと進出したてで、確かにその新鮮さというか爽やかさがその顔から感じられるのだけれど、その爽やかさもB級映画オタクの毒気にさらされるとわざとらしいアニメ(というよりは漫画)の登場人物のようにしか見えなくなってくるから不思議だ。
この映画は前半のクライム・アクション部分と、後半のスプラッター部分とにきっちりと分かれているわけだけれど、印象に残るのはどうしても後半だ。前半は、タランティーノ/ロドリゲスとしては非常にスタンダードなアクション映画である。そのスピード感とひねりの利いた登場人物の作り方にはらしさを感じるけれど、あくまでも展開の仕方の筋道が見えるストレートな物語である。しかし、ハーヴェイ・カイテル演じる元牧師が登場するあたりから物語に変なスパイスが加わってきて、これはなんだかおかしいなぁ… と思っていたら、物語が急に転調する。
そこのひねりがまさに真骨頂、ふたりがB級映画オタクであるがゆえにできる離れ業といっていいだろう。前半も後半もB級映画のひとつのパターンではあるけれど、まさかその二つをこんな形で組み合わせてしまうとは… という映画のパターンを知り尽くしたオタクならではのひねり方なのだと思う。
ここは、オタクのよい面が出たといっていい。オタクというものはとかく批判されがちだけれど、ただただマニアックに物事を追求しているだけではなく、時にはクリエイティヴなこともする。どんどんどんどん追求していくことによってしか見えてこない風景というのもあるのだと思う。
しかし、後半部分はオタクのよくない部分というか、一般的には受け入れられがたい部分が出たとも言えるだろう。確かに面白いのだが、表現はどんどんエスカレートしていき、収拾がつかなくなる。その悪乗りが受け入れがたい人にはこの映画そのものが受け入れがたくなってしまう。
まあ、別に一般受けすることを求めて作られた映画ではないと思うので、これでいいのだと思うし、その割にはかなり受け入れられた方だと思う。とりあえず、続編を見たいような、見たくないような気持ちにさせる。