ボーン・アイデンティティ
2004/6/30
The Bourne Identity
2002年,アメリカ,119分
- 監督
- ダグ・リーマン
- 原作
- ロバート・ラドラム
- 脚本
- トニー・ギルロイ
- ウィリアム・ブレイク・ヘロン
- 撮影
- オリヴァー・ウッド
- 音楽
- ジョン・パウエル
- 出演
- マット・デイモン
- フランカ・ポテンテ
- クリス・クーパー
- クライヴ・オーウェン
- ブライアン・コックス
- アドウェール・アキノエ・アグバエ
地中海の漁船に引き上げられた男、自分が誰であるかも記憶のないその男の皮下には銀行口座の番号を記したマイクロカプセルが。2週間後、上陸した男は手がかりを求めてその銀行へ行く。そしてその貸し金庫にはジェイソン・ボーン名義をはじめとする複数のパスポートと多額の現金、そして拳銃が入っていた…
ロバート・ラドラムのサスペンス小説の映画化。パリ市内でのカーチェイスは初めてということで話題になったが、基本的にはアクション映画というよりはシンプルなサスペンスという感じ。原作が3部作なので、映画も3部作になる予定。
発想としては面白いと思う。だからたぶん原作は面白いのだろう。
だが映画としては並であるとしか言いようがない。最初は漁船に拾われて、なかなか面白い展開だったのに、たまたま出会ったマリーに金を渡して… というあたりからまったくありきたりの話になってしまう。記憶喪失という要素はあっても、それが今ひとつ生かされていないというような気がする。
この記憶喪失というのがなかなか厄介だ。記憶がないということで、この主人公ジェイソンは自分が普通の人間であるはずだという仮定を立てる。その過程に反する複数のパスポートや多額の現金や拳銃が出てきても、その仮定から逃れることができない。しかし、果たしてそんなことがありうるだろうか、という疑問が生じる。記憶がないからといって、その記憶が別の記憶に置き換えられるというわけではないはずだ。
彼の行動を見てみると、スパイであるということが特別なことであると認識しているように見える。しかし果たして本来スパイである男が記憶を喪失したところでそのような見方の変化が起こるだろうか。実際のところはどうだかわからないが、とりあえずそこに説得力やリアリティはない。かつては普通の生活をしていて、スパイであるあいだだけ記憶を消されたのならともかく、そもそもスパイであるのに、そんなご都合主義な… と思ってしまうのだ。
そんな矛盾も抱え、マット・デイモン意外はキャストもさえないというこの映画はちゃんとしたB級映画として作られるべきだったと思う。B級映画に「ちゃんとした」という表現もおかしいが、この映画はB級映画になりそうで、しかしまっとうなハリウッド映画であるようなふりをしているそんな映画になってしまっているのだ。カーチェイスのシーンで窓から覗く風景がどう見てもはめ込みだったりすることもあるのに、全体の空気としてはちゃんとした映画だということを主張しているような気がする。
B級映画のレベルだったらこの映画はかなり面白い映画になる。反体制的な雰囲気もあるし、全体的に暗い感じもするし、舞台がヨーロッパというのも味があるし。
2作目以降は、バリバリB級な雰囲気でお願いします。