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突然炎のごとく

2004/7/6
Jules et Jim
1961年,フランス,107分

監督
フランソワ・トリュフォー
原作
アンリ=ピエール・ロシェ
脚本
フランソワ・トリュフォー
ジョン・グリュオー
撮影
ラウール・クタール
音楽
ジョルジュ・ドルリュー
出演
ジャンヌ・モロー
オスカー・ウェルナー
アンリ・セール
マリー・デュボワ
サビーヌ・オードパン
preview
 パリで無二の親友となった2人の文学青年、ドイツ人のジュールとフランス人のジム、友人の家で知った女神の彫刻に魅了された2人は、その女神を髣髴とさせるフランス娘カトリーヌと出会う。カトリーヌはジュールに惹かれ、2人は恋人同士になるが、もちろんジュールとジムの友情も続いていて、3人で海辺に家を借りることにしたが…
 トリュフォーは長編の第3作目になってようやく彼らしい恋愛映画を撮ったということができるのかもしれない。恋と友情というテーマでじっくり描く、そんな映画。
review
 ひとりの女をめぐるふたりの男、そのような物語からはおのずとふたりの男の対比がテーマとして浮かび上がってくる。その中心となる女カトリーヌは感情的/衝動的な女として描かれる。ふたりの男は基本的にはジュールが理性的、ジムが感情的な性格を持っているようだが、ふたりともが文学者であることを考えてみても、どちらも情緒的な性格の持ち主であることも確かだ。
 理性的であるかどうかは別にしてもジュールのほうが確信を持って生きているように思える。カトリーヌのそばにいること、それが自分が欲してやまないことだと確信し、それを実現するためにあらゆる努力を惜しまない。そのためには彼女が他の寝てもかまわないし、ジムと結婚したってかまわないのだ。非常に理性的に見えるその行動だが、それもま感情的な行動でしかないことが映画の終盤にジムによって明らかにされるわけだが、語り手であるジュールはそのことを認めようとはせず、そのジムの発言を深く考えてみようとはしない。
 したがってふたりは対比されているようで実は対比されていないのかもしれないと思う。この映画は3人の物語であるようで、実はまったくジュールの物語でしかない。もしかしたら語り手であるジュールのまったくの創作であるのかもしれないのだ。
 そう考えてみると、この映画のあまりに作り物じみた感じがいろいろと見えてくる。たびたび画面のサイズが変わるのは、時代設定にあった昔のフィルムをそのまま使っているせいだ。とくに戦争のシーンでは、ほとんどが何かのフィルムの借り物で、それを組み合わせてなんとなくつじつまを合わせている。

 という非常に不思議な映画である。ヌーヴェル・ヴァーグらしいといえばそのとおりだが、果たして面白いのか面白くないのかよくわからない。面白いことは面白いのだが、いったい何の映画なのかわからない。体裁としては恋愛映画なわけだが、果たして本当にそうなのか。映画全体を見てみると、そんな物語自体が存在していなかったのではないかという疑問がぬぐえない。果たして夢か現実か。女神の彫刻によって喚起された白昼夢に過ぎないのではないか。少なくとも、そんなことを思ってしまうほどに現実味を描いた映画なのだと思う。
 これがトリュフォーの映画の中でどのような意味を持つのかは、もっと他の映画を観てみないとわからない。映画の終盤にナチス(だと思う)による焚書のシーンが出てくるが、これはもちろん『華氏451』につながっていくわけだ。トリュフォーという監督はどうしても自分の作品群をひとつのシリーズのように見せてしまう作家らしい。

Database参照
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