ズーランダー
2004/8/1
Zoolander
2001年,アメリカ,89分
- 監督
- ベン・スティラー
- 脚本
- ドレイク・セイザー
- ベン・スティラー
- ジョン・ハンバーグ
- 撮影
- バリー・ピーターソン
- 音楽
- デヴィッド・アーノルド
- 出演
- ベン・スティラー
- オーウェン・ウィルソン
- クリスティーン・テイラー
- ミラ・ジョヴォヴィッチ
- デヴィッド・ドゥカヴニー
- デヴィッド・ボウイ
- ナタリー・ポートマン
- レニー・クラヴィッツ
- ウィノナ・ライダー
マレーシアで新しい首相が就任し、児童労働などが規制される。それに危機感を強めたアメリカのファッション業界は首相の暗殺をたくらむ。一方、超人気モデルのデレク・ズーランダーは過去3年間連続受賞していた最優秀モデルの座を今が旬のハンセルに奪われてしまう。落ち込むデレクを殺し屋に仕立てようと売れっ子デザイナーのムガトゥはデレクにショーへの出演のオファーをするが…
ベン・スティラーが監督・主演した皮肉たっぷりのおバカ・コメディ。80年代のサウンドがバカさ加減をさらに盛り上げ、有名人が多数出演して楽しめる。
この映画がファッション業界と、そしてショウビズ業界全体を皮肉っていることは確かだ。それはある種の自虐的なギャグで、自分たちがアホで間抜けだということを言っているということになる。となると、それは観客には面白い。自分はバカだといってバカをやる。それを見ている私たちは安心して彼らをバカにすることができるわけだから。
そこに、ステレオタイプ化されたおバカなギャグがはいる。モデルはゲイで、そして頭が悪い。デレクのルーム・メイト3人がその典型だ。ただ頭を空っぽにして、ボーっと見ていれば結構笑える映画だと思う。というか、笑いのツボに入ってしまえば大爆笑映画になるのだと思う。だから、コメディ好きだという人はぜひ見てみて、ツボに入るかどうか確かめてみるといいと思う。ダメならダメで、まあそれは仕方ない。
で、私はツボに入らず、ちっとも面白くなかったので、どうして面白くなかったのかをちょっと考えてみた。この映画を楽しむには、先ずその世界に入らなければならず、最初に入り込むことに失敗してしまうと最後まで笑えない。そして、最初に入り込むことができなかったのは、最初に書いた笑いの構造にあるのだと思う。つまり、自分たちを卑下する自虐的なギャグ。それは一見すると自虐的で、われわれを相対的な高みに持ち上げているように見える。
しかし、実際のところその構造自体がこの映画の狙いであって、観客はその構造にからめとられて、笑わせられているのだ。つまり、自らを卑下して、観客を高みに持ち上げているふりをして、そのような戦略にやすやすとはまってしまう観客を実はバカにしているのではないか。バカにしているとまでは言わないにしても、観客をいい気分にさせるという戦略がそこにあるということは確かだ。
そのような戦略/構造が映画の序盤で透けて見えてしまって、そこからはもうどうにも笑うことができなくなってしまった。確かに、ベン・スティラーがトップ・モデルという皮肉な前提は面白いし、物語と関係ないギャグは面白いんだけど、全体的にはなんだかねぇ~ という感じ。