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ベストセラー

風速40米

2004/8/20
1958年,日本,97分

監督
蔵原惟繕
原作
松浦健郎
脚本
松浦健郎
撮影
横山実
音楽
佐藤勝
出演
石原裕次郎
北原三枝
宇野重吉
川地民夫
渡辺美佐子
山岡久乃
金子信雄
preview
 ハイキング中、急な嵐で山小屋に逃れた女の子4人組、そこにいた男たちに襲われそうになるが、ふたりのタフガイに助けられる。山から帰ったそのタフガイのひとり颯夫は父親がライバルの建設会社に自分を入れようとしていることに不信を覚えるが、家に帰ると山小屋で助けた娘のひとり今日子と再会。彼女は父の再婚相手の娘だった。
 裕次郎のいつものラブ・ストーリーに建設業界の企業戦争という要素をミックス。なかなかよく練られた脚本で裕次郎ファンでなくとも楽しめる。
review
 裕次郎が裕次郎であるのはもう当たり前。この映画でも歌い、笑い、暴れる。歌のほうは、友達の姉にシャンソン歌手というのが出てきて、いつものように「うまいじゃない」といわれ、最後にはちょこちょこっと舞台で歌ったりもする。歌がメインではないので、そこからスターダムに、とは行かないが、とりあえず裕次郎ファンが歌も楽しめるように十分な配慮がなされている。笑うのはいつものとおり、はははーとうそのように笑うのだが、そのはすっぱな笑顔と今回のテーマらしいハンチングを頭にちょこんと乗せたファッションでファンはメロメロ。
 まあ、それはいい。この映画のメインのひとつはアクションである。この映画は基本的にアクション映画であり、映画は裕次郎大暴れのシーンで始まる。したがって、このまま裕次郎大暴れ+北原三枝とのロマンスですっきりと終わるのかと思うが、意外にそうでもなく、しっかりと練られたプロットに沿って展開して行き、どんどん面白くなっていく。
 ひとつの軸がアクションとすると、2つ目の軸は建築業界の企業戦争である。この頃から60年代にかけて企業戦争ものの映画は数多く撮られた。ある種のスパイ合戦、乗っ取り合戦、妨害工作合戦、というような戦争の暗喩とも言うべき戦いが映画になってきた。代表的なものといえば田宮二郎らが主演した『黒い試作車』などの「黒い」シリーズだろうか。とにかくこの映画もそんな企業戦争もののひとつとなって、それによってサスペンス的な面白さが加わる。そしてまた、その企業戦争が題名の理由となっている風速40米の台風のなかでの建設シーンというまた違うアクションシーンをも生むことになる。
 3つ目の軸は恋愛である。妹となった北原三枝と、友人の姉のシャンソン歌手を演じる渡辺美佐子。このふたりが裕次郎をめぐって争うということになるのだが、こちらのほうは意外と大きな展開は見せず、添え物程度という感じだが、展開的には意外と重要だったりもする。
 という、3つの軸があることで、この映画は面白くなっている。スター裕次郎に頼っただけの単純なプロットの映画は何本も見ているとさすがに退屈するが、この映画みたいに展開力があると裕次郎を楽しめるわけである。

 ということなのだが、この映画で気になったことといえば、あまりに偶然が多すぎることである。山でであったふたりの親同士が結婚して兄弟になるとか、友人の姉のパトロンが件の会社の社長であるとか、映画の序盤に映画に必要な登場人物たちをそろえてしまうために、あまりに強引にそれらの人々が結び付けられてしまう。そしてそのすべては偶然の出会いなのである。
 この偶然の力に頼りすぎるというのはスター映画にはありがちな展開である。それは、それらの映画が御伽噺であり、御伽噺である以上都合のいい偶然はいくらでも許されるからである。ヒーローとヒロインの出会いは劇的であればあるほどいいのである。
 だから、別にいいといえばいいのだが、この映画の場合は他のプロットが現実的であるために、その偶然が不自然に見えてしまうという見方にもなる。裕次郎映画であるということをとらえて、御伽噺だと考えれば気にならないが、企業戦争という現実的な(生臭い)プロットを中心に見ていくと、そのご都合主義がリアリティを奪っていくのだ。裕次郎映画であるということを忘れて、とことんリアルに作っていったら名作になったかもしれない映画だと思う。

Database参照
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監督順: 
国別・年順: 日本50年代以前

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