サンダーバード
2004/8/27
Thunderbirds
2004年,アメリカ,95分
- 監督
- ジョナサン・フレイクス
- 原案
- ジェリー・アンダーソン
- シルヴィア・アンダーソン
- 脚本
- マイケル・マッカラーズ
- ウィリアム・オズボーン
- 撮影
- ブレンダン・ガルヴィン
- 音楽
- ハンス・ジマー
- 出演
- ビル・パクストン
- アンソニー・エドワーズ
- ソフィア・マイルズ
- ベン・キングズレー
- ブラディ・コーベット
- ソレン・フルトン
- ヴァネッサ・アン・ハジンズ
- ロン・クック
- フィリップ・ウィンチェスター
- レックス・シャープネル
- ドミニク・コレンソ
- ベン・トージャーセン
南太平洋に浮かぶトレーシー・アイランドを拠点に世界中の災害救助に当たる国際救助隊、人呼んで“サンダーバード”。そのファミリーの五男のアランが国際救助隊の研究者ブレインズの息子ファーマットと休みで島に帰ってくる。サンダーバードのほうは油田火災で人名を救いかえってくるところ、何者かに追尾物質をつけられ、トレーシー・アイランドの場所を知られてしまう…
60年代に“スーパー・マリオネーション”で一世を風靡したTVアニメーション『サンダーバード』の実写映画化版。物語はオリジナルのエピソード以前の末っ子のアランがまだ入隊していない時期を描いている。
実写にしてCGバリバリにしたらあの『サンダーバード』のよさは消えてしまうんだろうな、とどうしても思いながら見始めてしまう。しかし、オープニングのアニメーションは現代的にアレンジされたいかにも60年代風のもので、かなり心をつかまれる。が、まだ映画には期待しない。そして映画は確かにあの『サンダーバード』ではない。あのスーパー・マリオネーション独特の味わい、アニメーションならではのコミカルさ、60年代という時代を反映したアナログな感じのよさ、そのようなものはすっかり消えてしまっている。
しかし、これはこれでまったく違う『サンダーバード』として楽しめる。基本設定を借りただけのまったく異なる『サンダーバード』。そう考えれば結構面白いのだ。
それを可能にしたのは、まず物語がオリジナル以前の物語であるということだ。オリジナルの各エピソードではすでに5人の兄弟はもちろん全員隊員であり、父親のジェフ・トレーシーは自分で現場には行かずにトレーシー・アイランドの指令室で子供たちに指示を出すだけである。その当たり前となった設定をまず覆したところで、オリジナルのサンダーバードのファンにも物語への興味を持たせることが可能になった。
そしてもうひとつは設定を近未来にしたことだ。オリジナルの時代設定も近未来だと思うが、40年前の近未来とは多分今頃のことだ。それをもう一度先の近未来(多分30年後くらい)に設定しなおして、物語を展開していく。それによって物語やメカの設定に無理がなくなって、変なところにつっかえることなく見ることが出来るようになる。オリジナルではすべての計器やスイッチがアナログで、そのあたりをどうするのかな、と思っていたけれど、設定の時代を変えることですんなりとその問題をすり抜けてしまった。
そのことでとてもわかりやすく、見やすい物語になったわけだけれど、それによってこれは当たり前の映画になってしまったという問題もある。これはサンダーバードであってサンダーバードではなく、「サンダーバード」という看板を借りた近未来SFでしかないのである。ここにやはり一抹の寂しさがある。
しかしまあ、こんな形で名作がよみがえるのはいいことだ。考えてみれば『スパイダーマン』だって、『ハルク』だって、舞台は現代に変わっていて、それでちゃんと成り立っているんだから、『サンダーバード』だってそれでいいわけだ。しかも、この物語は主人公を子供たちにすることで、ある種、典型的なアクション映画であることを逃れている。どこか『スパイ・キッズ』を思わせる映画で、となると、彼らが成長していく姿を描きながら続編もどんどん作っていけるというわけだ。
ユニバーサルらしく血が出るような暴力シーンもないし、基本的なテーマはヒューマニズムだし、メカがいっぱい出てきてわくわくするし、男の子にはたまらない映画、そんなイメージだ(もちろん女の子にも)。
ちょっとオリジナルに引きずられた話をしていくと、ブレインズの息子という設定はオリジナルにはないし、ブレインズはジェフよりは兄弟たちに近い年齢で、映画のイメージとは違っている。でもオリジナルでもブレインズはサンダーバードの開発段階から参加となっていたはず。他にもオリジナルとは矛盾というか、齟齬があるので、続編が作られるとするならば、そのあたりの展開も楽しみになってくる。