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28日後...

2004/9/13
28 Days Later...
2002年,イギリス=アメリカ=オランダ,114分

監督
ダニー・ボイル
脚本
アレックス・ガーランド
撮影
アントニー・ドット・マントル
音楽
ジョン・マーフィ
出演
キリアン・マーフィ
ナオミ・ハリス
クリストファー・エクルストン
ミーガン・バーンズ
ブレンダン・グリーソン
preview
 実験用チンパンジーのいる研究室に侵入した活動家たちが研究者の制止を振り切ってチンパンジーを解放すると、仲間のひとりがそのチンパンジーに噛まれ、突然凶暴化した。そして、その28日後、病院でひとり目を覚ましたジムは病院に人影がなく、病院から出てもまったく人がいないことに呆然とする…
 『トレイン・スポッティング』のダニー・ボイルが監督した近未来SFホラー。ホラーである以前にスピード感を重視したアクション映画という感じだが、イギリス映画らしい暗さもあってそれなりに見ごたえがある。
review
 この映画はいろいろなことを説明せずに済ませてしまっているが、いろいろ考えてみると、この“凶暴性”のウィルスなるものに感染した人は神経系が完全にやられるということなのだろう。全身が燃えていてもひるむ様子はなく、痛がってもいない。しかし、殺そうと思えば簡単に死ぬし、感染前と比べて何か力が強くなったりしているわけでもなさそうなので、筋肉などには作用しないらしい。
 そこで疑問なのは、なぜ昼間は安全なのかということと、どうして互いに殺し合いをしないのかということだ。昼間安全なのは、神経系が犯されたことによって夜行性になったのかなとは思うけれど、別に太陽に当たったら死ぬとか言うわけでもなさそうなので、あそこまで安心しているのは腑に落ちない。そして、互いに殺し合いをしないということの説明はまったくつかない。
 つまりこの映画は、SF風に原因を用意しただけで、実質的にはSFではない。

 では何なのか。
 ひとつの考え方としては、これは形を変えたゾンビ映画であるという考え方が出来る。ただただ人を襲う人間の姿をした怪物といえばゾンビ、ゾンビは恐ろしいけれど、単体ではそれほど恐ろしい怪物というわけでもなく、集団で襲ってくるからこそ恐ろしいという点も同じである。だから、ゾンビ映画と考えれば、とりあえずの整合性はつく。
 しかし、そのつもりで見ていくと、映画の後半はなんだか拍子抜けの展開になってしまったような気になる。“ゾンビ”は忘れられて、“人間”が前面に押し出されてくるからである。「本当に怖いのはゾンビではなくて人間だ」なんていう陳腐なメッセージを伝えんがためにこのような展開が用意されたのだとしたらこんな映画は唾棄すべきものだといわざるをえない。

 もうひとつの考え方としては、そもそもこれが“人間”の映画であるということだ。映画の最初のシーンで、活動家の質問に対して、研究家が「チンパンジーたちが感染しているのは“凶暴性”だ」というようなことを言う場面があった。私はここですでに違和感を感じた。SFならばそこで何かウィルスの名前とか、病名とか、薬物とかを言うはずだと思うのだが、“凶暴性”という非常に抽象的な言葉がそこで言われたというところに、何か「この映画は違う」という感覚があったのだ。そして、その感覚を信じていけば、この“凶暴性”なるウィルスは現実に人間が抱えている“凶暴性”を誇張したものに過ぎないのかもしれない。とも考えられるのだ。いわばこの“凶暴性”ウィルスなるものは今もわれわれの心の中に潜伏しているということである。
 そう考えると、後半の展開も納得が行く。そして、映画の終わり方は非常に気持ちの悪いものである。
 “凶暴性”ウィルスの本質とは非常に人間的なものである。凶暴なもの同士は共存し、弱者を襲う。弱者はそれに対抗するためには自分もまた凶暴化しなくてはならない。ウィルスによらずとも人々は凶暴性を身につけ、そこに待っているのは際限のない殺し合いだけということになってしまうのだ。だから、解決しているように見えるエンディングも、決して解決ではなく、その先にあるのも際限のない殺し合いだけなのだ。
 これはイギリスらしいそんなアイロニーにみちた恐怖映画であるのだと思う。

Database参照
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国別・年順: イギリス

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