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銀座カンカン娘

2004/10/22
1949年,日本,68分

監督
島耕二
脚本
山本嘉次郎
中田晴康
撮影
三村明
音楽
服部良一
出演
高峰秀子
笠置シヅ子
灰田勝彦
古今亭志ん生
浦辺粂子
岸井明
preview
 引退した噺家の家の二階に居候している画家を目指すお秋と歌手を目指すお春。お金がなくてピーピーのふたりは世話になっている恩を返すためにも仕事を探そうと外へ。そのついでに犬を捨ててきてくれとお上さんに頼まれるが、その犬ポチがきっかけで映画にエキストラとして出演、さらにそこで銀座で流しの歌い手をしているという白井に出会う…
 人気女優高峰秀子と人気歌手笠置シヅ子が共演した歌謡映画。主題歌の“銀座カンカン娘”がヒット曲となって、映画もヒット。とにかく底抜けに明るくて面白い。名人五代目志ん生の落語が見られるのもいい。
review
 こういう映画ってのは、筋なんてあってないようなもので、この映画もその例に漏れない。それでもこの映画は今見ても十分に楽しい。それは高峰秀子と笠置シヅ子の歌う“銀座カンカン娘”という曲の楽しさから来るのだろう。今見ればもちろん「懐かしの昭和歌謡」に過ぎないわけだが、この頃の歌謡曲というのはただの懐かしさを超えたよさがあるものが多い。西洋のメロディーを取り入れながら、耳障りがよく、しかもちゃんと歌詞を味わうことが出来る。そんな歌を中心として後は軽妙に、高峰秀子のかわいさと、笠置シヅ子の歌と(高峰秀子も劣らずうまいが)、志ん生の落語と、岸井明のギャグで映画を彩っているわけだ。
 この映画を撮る以前から高峰秀子は笠置シヅ子のファンで撮影の合間を縫ってステージを見に行っていたらしい。だから“銀座カンカン娘”という歌は見事な歌になったのかもしれない。笠置のステージを何度も見ていた高峰秀子はいつの間にやら笠置シヅ子の歌い方やらを身につけてしまっていて、彼女の歌にすんなりと入っていけた。そんな風に思うのだ。笠置シヅ子といえば、この映画の終盤で歌われる「うわ~お わおわお~」という歌は、何か他の映画でも聞いた覚えがあるのだが、何の映画だったろう? 笠置シヅ子といえばこの頃「ブギの女王」として引っ張りだこだったから、モダンな映画なら何に出ていても可笑しくないとは思うが、黒澤の『酔いどれ天使』だったんじゃないかとも思う。
 で、志ん生の落語だが、ここで志ん生は引退した噺家という設定(役名は新笑)で、お金がないので引退を撤回し復帰しようとするのだが、そのために家で落語の練習をしたりする。その練習(演目は「疝気の虫」)のときのそばの啜り方がなんとも名人芸なのである。そして、映画の最後にもひとつ噺が披露される。映画での台詞は一本調子なのに、噺となると見事に声色を使い分け、さすがの名人芸を感じさせるのが面白い。その志ん生も亡くなってもう30年になり、息子の志ん朝までも3年前に亡くなってしまった。
 この映画はそのような意味で、昭和の芸術の貴重な記録にもなっているのではないかと思う。公開された当時はブギも落語も大衆芸能に過ぎず、わざわざ記録するほどのものでもないと考えられていたかもしれないが、映画という形で今でも見ることが出来るのはうれしいことだ。

 この映画は今はそんな芸能の記録としてみることが出来る。しかし、そんなこと(笠置シヅ子や古今亭志ん生のこと)を知らなくても十分に楽しめる。そして、楽しめるということは翻ってやはり彼らが名人だったということを意味するのではないかと思う。
 映画は映画であり、そのものがドラマであると同時に、それは記録であり、意図的に、あるいは偶然に、様々な貴重なものを記録してもいる。そんなことを思ったりもした。

Database参照
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国別・年順: 日本50年代以前

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