スターは俺だ!
2004/10/31
Podium
2003年,フランス,90分
- 監督
- ヤン・モワクス
- 脚本
- オリヴィエ・ダザ
- ヤン・モワスク
- アルチュール=エマニュエル・ピエール
- 撮影
- ブノワ・デロム
- 音楽
- ジャン=クロード・プティ
- 出演
- ブノワ・ポールヴールド
- ジュリー・ドパルデュー
- ジャン=ポール・ルーヴ
- マリ・ジラール
60年代から70年代の人気歌手クロード・フランソワの物真似で人気を博したベルナールだったが、奥さんに反対され引退、相棒でミッシェル・ポルナレフの物真似をするクスクスとも音信不通となった。しかし5年後、テレビでクロード・フランソワの物真似大会が開催されるというニュースが流れると、クスクスから電話がかかってくる…
“マイ・ウェイ”のオリジナルを作ったことでも知られるクロード・フランソワをモチーフとして、懐かしのフレンチ・ポップスも盛りだくさんということで、フランスで大ヒットしたコメディ。
この映画、つまるところはフランスの懐メロの映画である。クロード・フランソワはフランスでは超有名人、39歳で浴室で電球にさわって感電死したということも有名らしい。映画はそのクロード・フランソワが亡くなったときのニュース映像で始まる。そして全編を通してクロード・フランソワ一色、クロード・フランソワのことをまったく知らない普通の日本人には何のことやらわからないが、“マイ・ウェイ”のオリジナルである“コムダビチュード”ともう1曲くらいは聴いたことがあるのだが、他はよくわからないから、それだけで楽しむというのはなかなか難しいかもしれない。そして、言及される他のフレンチ・ポップのスターたちもミッシェル・ポルナレフぐらいしかわからず、ジュリー・ドパルデュー(ジェラール・ドパルデューの娘! ちなみにブノワ・ポールヴールドは鼻がジェラール・ドパルデューに似ているが他人)演じる奥さんのヴェロが好きだという歌手のこともよくわからない。
ということなので、物語が盛り上がる終盤の前までは今ひとつ退屈な映画になってしまうかもしれない。コメディなので、一応笑えるところはあるわけだけれど、始終大爆笑というわけには行かず、たまにクスリという感じなのでそれだけでは少し辛かろうという気がする。
なので、物真似っていったい何なんだなどと考えてみた。ヴェロは映画の途中で息子に対して「自分を持っていないってことなのよ」見たいな事を言うわけだが、この映画はもちろんそんなことを言っているわけではない。ベルナールがクロード・フランソワの物真似をするのは、クロード・フランソワが好きでたまらず、尊敬してやまないからである。尊敬し、彼に近づきたいと思うからこそ彼のまねをする。それが“物真似芸”という形で現れるからバカにされたり、軽蔑されたりするわけだが、そこまで行かない単なる真似は人間が生きていくうえで必要不可欠なものだ。人は誰でも尊敬する人、好きな人のことを真似することで成長したり、変化したりする。発明や発見だって、結局はまねから始まったことであり、極論してしまえば人間が人間としてこれほどまでの文明を作り上げたのは人間のまねる能力のおかげだともいえるのだ。
まあ、そんな大上段に構えなくとも、この映画は真似ることをバカにするようなことではないといういことを言わんとしているように思える。母親がいかにバカにしようとも息子は父親を真似ようとする。それは彼が父親のことが好きだからであり、父親のようなりたいからである。そんな子供の素朴な「真似たい」という気持ちを描くことで真似るということが持つ本質的な意味を浮き彫りにする。
コメディだけど、そんなことを考えてしまうのは、これがフランス映画だからだろうか。