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子猫をお願い

2005/1/25
Goyangileul Butaghae
2001年,韓国,112分

監督
チョン・ジェウン
脚本
チョン・ジェウン
撮影
チェ・ヨンファン
出演
ペ・ドゥナ
イ・ヨウォン
オク・ジヨン
イ・ウンシル
イ・ウンジュ
preview
 高校を卒業し、それぞれの道を歩き始めた仲良し5人組ヘジュ、テヒ、ジヨンと双子のピリュとオンジョ。ヘジュの誕生日に久しぶりに集まった5人だったが、証券会社に入り出世したヘジュはそれを鼻にかけて、しらっとしたムードが漂う…
 独特の雰囲気で人気を得た女優ペ・ドゥナを主人公に据えたチョン・ジェオンの長編デビュー作。派手さはないが、細かなエピソードの面白さと五人五様の心理の機微が面白い佳作。
review

 この映画の舞台はインチョン(仁川)である。インチョンといえば、日本人にしてみれば、空港があるところという印象しかないが、この映画を見ると、そこはソウルの郊外であり、同時に港町であるということがわかる。空港の街であると同時に海港の街でもあるわけだ。そして、そこにある生活は韓流ブームでやってきたソウルやのどかな田舎を舞台にした映画で描かれているものとはかなり違うものだ。それは当たり前のことなんだけれど、どこか新鮮な驚きを覚える。
 そして、この映画の主人公となる5人(4組)はそれぞれに異なる背景を持っていて、それぞれ違う文化や階級のようなものを代表するかのように見える。なかでもヘジュは「格好いい生活」に憧れているという点でイメージしやすい韓国人像にはまっている。それに対照させられているのがジヨンとテヒなわけで、ジヨンは貧しさを、テヒ(の家族)は文化程度の低さを象徴している。非常に異なっているように見える3人だが、実は非常に似通っている。3人が3人ともインチョンを抜け出ようとしているのだ。
 彼女たちは衝突するが、その原因はヘジュとジヨンの階級意識にある。ヘジュはジヨンを見下し、ジヨンもどこかで自分を卑下している。そこから対立が生まれるわけだが、テヒと双子はその階級意識の外にいる。だから、あのような関係性が生まれるわけだが、彼女たちをつなぐ関係はもちろん高校時代の共通の記憶というモノもある。だから喧嘩はしても簡単に決別はしない。

 しかし、この映画が展開しているのは、そのような過去の関係性から衝突を経て築かれる新たな関係性の物語である。つまり、決別はしないが関係性は確実に変化する。そしてその時に重要になってくるのが子猫なのだと思う。
 わかりやすく言えば、子猫というのは彼女たちにとっての高校時代の象徴である。工場が閉鎖されて失職したジヨンは子猫を拾って帰る。そして、それをヘジュにあげるが、返されてしまう。そこには複雑な事情があり、実は返したくなかった(高校時代の関係を維持したかった)と考えることもできるわけだが、とにかく返さざるを得なかった。つまり、ヘジュはいち早く高校時代の関係から離れて行ったわけだ。そして、それからしばらく子猫は新たな世界へと踏み出せないでいるジヨンの元にとどまる。そして子猫は彼女のよりどころになるわけだ。しかし、ジヨンはそれをテヒに預けざるを得なくなる。それが手元から離れてしまうとジヨンはよりどころを失ってしまうわけだが、テヒは子猫のことを話すことで、ジヨンに彼女が孤独ではないこと、帰るべき場所があることを示すのである。そして最後に子猫は双子のところに行く。それはもちろん、双子だけが変わらずそこにいるからだ。

 この映画はすごく行間が広い映画だと思う。つまり、具体的に描かれていることよりも、その背景にあると推察されるものにこそ面白みがある映画なのだと思うのだ。展開されている物語だけを見たら対して面白くはない。しかし、その背後にある彼女たちの関係性、過去-現在-未来をつなぐ関係性の変化に目をやると、そこには非常に面白いドラマが存在するのだ。
 そして、そのような背後の関係性に観客が気づくように作られているのがこの映画の巧妙なところだ。何気ない一言の台詞や、目配せや、身振りや、間で観客に考えるきっかけを与える。その演出の仕方はまさに見事の一言に尽きる。出演者にトップスター美女を起用せず、テヒとジヨンという個性的なキャラクターを中心に持ってきたキャスティングも成功だと思った。

Database参照
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国別・年順: 韓国

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