仮面の男
2005/3/13
The Man in the Iron Mask
1998年,アメリカ,132分
- 監督
- ランドール・ウォレス
- 原作
- アレクサンドル・デュマ
- 脚本
- ランドール・ウォレス
- 撮影
- ピーター・サシツキー
- 撮影
- ニック・グレニー=スミス
- 出演
- レオナルド・ディカプリオ
- ジェレミー・アイアンズ
- ジョン・マルコヴィッチ
- ジェラール・ドパルデュー
- ガブリエル・バーン
- アンヌ・オアリロー
ルイ13世に使えた三銃士たち、その内ダルタニアンだけが若きルイ14世に銃士隊長として仕えていた。しかし、そのルイ14世は国民の飢えを気にも留めず放蕩生活を送る暴君だった。しかし、そのルイ14世にはバスティーユ監獄に幽閉されている“仮面の男”という秘密があった…
アレクサンドル・デュマの『鉄仮面』をアレンジし、主演にディカプリオ、脇にはジェレミー・アイアンズ、ジョン・マルコヴィッチ、ジェラール・ドパルデューという名優を配した。
どうもディカプリオのコスチューム・プレイは見ただけでついつい笑ってしまうのだが、それはまあ置いておくとしても、この映画の主役はディカプリオであるはずなのに、あまりに存在感が薄い。ほとんどディカプリオがいるという事だけで客を惹きつければいいというだけの役回りで、映画としては他の役者がやっても全く問題はない。ルイ14世と仮面の男という二役を演じているわけだが、ことさらに演じ分けるわけでもなく、ただ役がふたつあっただけという感じである。
実質的には、この映画はジェレミー・アイアンズ、ジョン・マルコヴィッチ、ジェラール・ドパルデュー、ガブリエル・バーンという4人のベテランたちの映画だ。とくにジョン・マルコヴィッチがいい味を出している。物語のほうも彼らを中心に回り、その物語はデュマの『鉄仮面』をもとにしているだけに面白い。『鉄仮面』を読んだことがないので、この映画の話が原作にどれくらい忠実に作られているのかはわからないが、デュマの作品は『巌窟王』や『三銃士』など今読んでもわくわくするような面白さのある作品が多く、映画化されることも多いので、面白い映画になりやすいのかもしれない。
だから、この作品も単純に物語として面白く、映画としてどうこうというよりも、ストーリーテリングの面白さでひきつけられるといったほうがいいのだと思う。もちろん、そのような純粋な物語としてみることができるというのは、この物語の中心となるベテラン俳優たちの演技の質が大きく寄与しているのだろうと思う。
セットや大道具を見る限り、この映画にはリアルさはあまりない。舞台となっている時代を想像したときのイメージよりもこぎれいで新しすぎる感じがするし、作り物じみている。これは映画の映像としてのイメージをディカプリオの側にあわせ、映画全体が1つの夢物語とでもいうものになるように構成されているからだろう。美男美女が集う豪華な舞踏会、夢のような美男子の王様、それらによって作り上げられる夢世界も映画には重要なのだ。
つまり、ディカプリオにつられて、そんな夢物語を見るか、あるいはそのあたりは無視して純粋な物語の面白さを味わうか、そのふたつの見方がこの映画はできるわけで、どちらにしてもそれなりに楽しめるというなかなか優秀な作品。
ジェラール・ドパルデューが喜劇役者っぷりを発揮して、道化役として映画に笑いのスパイスを加えているのもいい。