コーヒー&シガレッツ
2005/4/17
Coffee and Cigarettes
2003年,アメリカ,97分
- 監督
- ジム・ジャームッシュ
- 脚本
- ジム・ジャームッシュ
- 撮影
- トム・ディチロ
- フレデリック・エルムズ
- エレン・クラス
- ロビー・ミューラー
- 出演
- ロベルト・ベニーニ
- ジョイ・リー
- サンキ・リー
- スティーヴ・ブシェミ
- イギー・ポップ
- トム・ウェイツ
- ジョー・リガーノ
- ルネ・フレンチ
- アレックス・デスカス
- ケイト・ブランシェット
- メグ・ホワイト
- アルフレッド・モリナ
- GZA
- RZA
- ビル・マーレイ
- テイラー・ミード
最初の話は、5杯ものコーヒーを前に座る男が初対面らしき男とぎこちない会話をするという短編。それに始まり、コーヒーとタバコを小道具に次々と他愛もない物語が展開されて行く。
ジャームッシュが17年の間に撮りためたという11の短編、ロベルト・ベニーニ、トム・ウェイツ、ケイト・ブランシェット、RZAなどバラエティーに富んだ豪華な出演者が自由に演じているのを見るだけでも価値ある作品。
とにかくどれも他愛のない話だ。意味があったり、考えさせられたりという話はまったくと言っていいほどない。でも、それぞれにおかしかったり不思議だったり、少し悲しかったりして面白い。
まず、全体的なことを言うと、この映画はタイトルどおりコーヒーとタバコがやたらと出てくる映画である。そして、そのコーヒーとタバコというものがなぜやたらと出てくるのかといえば、それが「場を持たせる」からだ。この作品の11の短編のほとんどは、ふたりの会話で出来ているが、そのふたりというのが基本的に気まずい空気のふたりなのである。ことさらに話すこともなく、本当は早く切り上げたいのだけれど(特にどちらか一方が)、その関係性と限りとか言うようなもので一緒にいなければならない。そんな時、コーヒーやタバコが場を持たせてくれる。そのような小道具としてのコーヒーとタバコが前面に押し出されたという感じの映画なのである。
それが面白く出ているのは、まず最初のロベルト・ベニーニとスティーヴン・ライト。何に緊張しているのかわからないがとにかく緊張しているロベルト・ベニーニがコーヒーを5杯も並べ、手をカタカタと震わせる。そしてなぜかスティーヴン・ライトの歯医者の予約に代わりに行くことになっていそいそと席を立つ。この気まずさはこの映画のほとんどの作品にある気まずさを凝縮した感じだ。同じような気まずさがあるのはイギー・ポップとトム・ウェイツの会話や、ケイト・ブランシェットが二役を演じたいとこ同士の会話。どちらも妙にギクシャクした間とまったく内容の伴わない会話が笑いを誘う。
それに対して、ちょっと違った感じになっているのは3人が登場する話だ。ひとつは双子がコーヒーを飲んでいるところにウェイターのスティーヴ・ブシェミがやってくる話と、GZAとRZAが紅茶を飲んでいるところにウェイターのビル・マーレイがやってくる話。ブシェミの登場する話のほうは、双子の行動が非常に面白い。男女の双子でそっくりというわけではないし、行動が同じとか言う見え透いたつくりでもないのだけれど、その行動の一致の仕方とずれ方がなんとも面白い。これに対して、ビル・マーレイが登場するほうの話は、とにかくビル・マーレイがおかしい。一本くらい気持ちよく笑える話をという感じで入れたんじゃないかと思えるくらいに笑える。
その他の作品にも味わい深いものは多い。どの作品にもジャームッシュらしい空気はあるが、その雰囲気には様々なものがある。ジャームッシュというとどうもどの作品も似ているという印象は否めなかったのだが、こうしていろいろな作品を並べられると、実にバラエティーに富んでいることがわかるし、そのそれぞれが長編として撮られた作品のどれに似ているかなどということを考えてみることも出来る。