わるいやつら
2005/4/23
1980年,日本,129分
- 監督
- 野村芳太郎
- 原作
- 松本清張
- 脚本
- 井出雅人
- 撮影
- 川又昴
- 音楽
- 芥川也寸志
- 出演
- 片岡孝夫
- 松坂慶子
- 藤真利子
- 梶芽衣子
- 宮下順子
- 藤田まこと
- 神崎愛
- 緒形拳
- 渡瀬恒彦
- 佐分利信
ファッションショーを開く新進デザイナーの槙村隆子が暴漢に襲われそうになったところを戸谷病院の院長の戸谷信一が救った。その戸谷は妻と別居中で、横武たつ子、藤島チセという2人の女と関係を持っていた。横武たつ子には怪しげなクスリを渡し、それを飲ませたたつ子の夫は徐々に衰弱して行く。また家には父親の元愛人で婦長の寺島トヨが同居していて…
松本清張が自らの原作を企画、野村芳太郎との共同プロダクションである霧プロで製作した作品。男と女の愛憎絡む濃い物語だが、サスペンス色が薄く、散漫な印象。
前半は、物語は戸谷という男が女をあさるただそれだけの物語であるように見える。女たちをものにするために医者という立場を利用し、横武たつ子の夫に毒を盛る。京都にも女がいる、妻もいる、同じ屋根の下に暮らす女もいる。しかし、横武たつ子の夫が死に、それが毒殺であることがわかり、しかもそれは戸谷が毒を盛ったせいではない(そもそも毒を盛っていない)とわかったあたりから不思議な展開になって行く。
しかし、それでもなかなか物語は進まず、どうも退屈だ。女の欲望が戸谷を惑わせ、誰かが戸谷を破滅させて行くという展開になるだろうと予想はつくのだが、だからどうした? とついつい思ってしまう。それは戸谷という男に魅力がないかもしれない。彼の目的が何かわからず、自分は女をもてあそんでいるプレイボーイだと思っているだけで、結局何をしているわけでもないつまらない男。そんな男のもてっぷりを観ても、何も面白くはない。
だから、こんな話がいつまでも続くのかと退屈してしまうわけだが、先ほど書いたたつ子の夫に毒を盛った盛らないという話から生じる戸谷の思惑と物語の展開の齟齬が清張らしいサスペンスの萌芽を感じさせ、そこに無理やり興味を持って行って物語を追って行く。戸谷は女たちを利用しているようでいて、実は女の誰かが戸谷を利用している。誰かが(あるいはみんなが)戸谷をだまそうとしている。
そして、そのサスペンスは物語の終盤にバタバタと展開して行く。これまでの1時間半は何だったのかというくらいに、最後の30分の展開が早く、めまぐるしく、面白い。出演者という意味でも、緒形拳やら佐分利信やら渡瀬恒彦やらが突然に登場し、緒形拳などはなかなか重要な役周りを演じる。
最後が面白かったから、それでいいといえばいいのだが、逆に最後が面白いだけに、どうしてそれまでがあんなに退屈な展開なのかといぶかしんでしまうというのも正直なところ。緒形拳や佐分利信と比べるとそこまでの主要な登場人物を演じる片岡孝夫や松坂慶子や宮下順子はどうにも幼稚でTVの2時間ものサスペンスドラマのようにしか思えない。
最後まで我慢して見よかったけれど、私はこれは失敗作だと思う。