マイ・ボディガード
2005/6/13
Man on Fire
2004年,アメリカ=メキシコ,146分
- 監督
- トニー・スコット
- 原作
- A・J・クィネル
- 脚本
- ブライアン・ヘルゲランド
- 撮影
- ポール・キャメロン
- 音楽
- ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
- 出演
- デンゼル・ワシントン
- ダコタ・ファニング
- クリストファー・ウォーケン
- ラダ・ミッチェル
- マーク・アンソニー
- ジャンカルロ・ジャンニーニ
- ミッキー・ローク
ジョン・グリーシーは旧友のレイバーンを訪ねてメキシコにやってくる。仕事のないグリーシーはレイバーンの紹介で誘拐が多発するメキシコ・シティに住む裕福な一家の娘ピタのボディー・ガードとなる。ボディガードという仕事にまったく乗り気ではなかったグリーシーだったが、ピタはそんなグリーシーにすぐなついた。
A・J・クィネルのベストセラーの映画化。トニー・スコットらしいクールな映像がメキシコという舞台にあっている。
この映画は始めから国境を挟んだメキシコの側の無法ぶりというか治安の悪さが強調されて始まる。アメリカ人にとってもメキシコというのは危険な国、ということだろう。そこにやってきた過去に後ろ暗いところがありそうなアル中のアメリカ人、それだけで何か起こりそうな感じもあるし、デンゼル・ワシントンはそのような雰囲気をかもし出すのがうまい役者だ。
確かにこの映画は面白い。前半はともかくも、後半のデンゼル・ワシントン演じるグリーシーのハチャメチャさはかなりすごい。クールな映像に冷酷な殺人者、この組み合わせで展開されるアクションには迫力があることは確かだ。
しかし、グリーシーをそこまで駆り立てるものが映画の前半で描かれていたかどうかということには疑問がある。映画の冒頭に苦虫を噛み潰したような顔をし、神にも許されえない自分自身を恥じ、苦しんでいたというのはわかる。しかし結局その苦しさがどのような原因で生じ、どれほどのものなのかということはリアルには伝わってこない。回想シーンを挿入するというのも陳腐だが、この作品はどうも逆に説明が少なすぎる気がして、発射されなかった銃弾の話もいかにも唐突だし、そこまででグリーシーに感情移入して彼の苦しみを共有しろというのは難しいところだ。
もちろんそれは観る側の問題かもしれない。私はこの映画を観ながらまず思ったのは外国を舞台にしたハリウッド映画のいつもどおりの自分勝手さである。ハリウッド映画は舞台がどこであろうと基本的に英語で会話をする。この作品はグリーシーは一応スペイン語が出来るし、ピタの母親はアメリカ人だし、という設定で英語で基本的な会話がなされることが不思議ではないように説明されているわけだが、それでもやはりその違和感はぬぐいきれない。
物語に入り込む前にそんなことを考えてしまったから、映画に観客を引き込もうするこの映画のリズムに乗れなかったということになるのだろうが、どうもこの手のクライム・サスペンスは何を見ても同じという気がしてしまって食傷気味だ。もちろん「これはっ!」という傑作もたまにはあるのだが、それ以外はなんとも代わり映えのしない、同じことの繰り返しとみえてしまう。
デンゼル・ワシントンやダコタ・ファニングが好きならば、それによって他の作品との差別化が出来るが、そうでないとまあまあおもしろいアクション映画という以上ではない。後半のアクションシーンをもっと過激にしてジョン・カーペンターもびっくりというくらいにすれば、別の面白さも出てくるのだろうが…