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ジャズ大名

2005/6/24
1986年,日本,86分

監督
岡本喜八
原作
筒井康隆
脚本
岡本喜八
石堂淑朗
撮影
加藤雄大
音楽
筒井康隆
山下洋輔
出演
古谷一行
財津一郎
神崎愛
岡本真実
殿山泰司
ロナルド・ネルソン
ファーレズ・ウィッテッド
レニー・マーシュ
ジョージ・スミス
利重剛
ミッキー・カーチス
細野晴臣
山下洋輔
タモリ
preview
 アメリカで南北戦争で奴隷解放されたジョーら4人は故郷のアフリカを目指し、メキシコから船に乗るが、船はアフリカではなくアジアに向かう。それに気づいた彼らは小船で脱出して日本に漂着する。一方、日本は幕末、駿河湾に面する小藩庵原藩の藩主海郷亮勝は時流に乗れず、厭世的な気持ちで篳篥を吹きながら日々を過ごしていた…
 岡本喜八が筒井康隆の同名小説を山下洋輔の音楽とともに映画化。幕末とジャズという奇想天外な組み合わせが岡本喜八らしく、かなり変わっているが面白い作品になった。
review

 岡本喜八の軽快なテンポはジャズに通じる。だから作品にジャズが取りこまれるというのはまったく自然なことだ。そして岡本喜八が好んで舞台とする幕末とジャズを組み合わせれば、岡本喜八らしい奇想天外な世界が出来上がる。そのような意味でこの作品は非常に岡本喜八らしい作品だ。幕末という時代の暗さはあるが、その中で展開される明るく楽しいコメディ、ジャズのテンポで映画が進み、ぐんぐんと引き込まれてあっという間に終わってしまう。一体全体何がいいたいのかはわからないけれど、なんだか面白い。そんな映画に仕上がっている。しかもこの作品が作られたのは1986年、日本映画の低迷期、そんな時期にもこんな良質の映画を作り続けていた岡本喜八という監督はやはりすごいと思う。
 この作品はコメディに大きく傾いていて、岡本喜八のもうひとつの大きな特徴といえる戦争や争いというテーマは後退しているように見える。確かに具体的に戦いが展開されるのは映画の最終盤になってからだし、その戦いもジャズの演奏にかき消されてしまう。
 しかし、それでもそこにメッセージがないわけではない。まず、ジョーたちが日本に流れ着いたとき、唐突に砂浜を進む「ええじゃないか」の行列がある。この「ええじゃないか」は幕末から明治維新にかけての民衆の間で巻き起こった運動だが、民衆の視線から映画を作る岡本喜八はこの「ええじゃないか」に何かを見出したようで、『赤毛』にも重要な要素として登場させている。思うに岡本喜八がこの「ええじゃないか」に見出したのは民衆のエネルギー、革命とか、変革とかいった具体的なもの以前に存在する民衆の爆発的なエネルギーの表出なのではないかと思うのだ。それは「ええじゃないか」という言葉に表現されるように具体的な目的を持った運動ではない。しかしその圧倒的なマンパワーとエネルギーであらゆるものを圧倒して行く、侍たちが争う尊皇も上位も佐幕も関係なく、とにかくエネルギーを爆発させるだけなのだ。
 そして、その「ええじゃないか」とジャズの間に何らかの共通点を見出す、そのようにしてこの映画は築きあげられていったのではないか。この映画の主人公である海郷亮勝という人物はもちろん侍だが、幕府をめぐる戦乱にはまったく興味がなく、ただ音楽だけに情熱を持つ。
 戦争や争いの無意味さを描き続ける岡本喜八の作品にはこのような人物、争いを展開する地位にいながらその争いの埒外に自分を置いてその争いを客観視し、その無意味さを認識してしまっているような人物が数多く登場してきたが、この海郷亮勝はそのような人物の集大成的な人物であり、この映画はそのような無意味な争いを物語から徹底的に排除し、そのような無意味な争いに対抗できるはずの民衆の力というものに描写の力点を置いた作品ということが出来る。
 だから、一見軽いコメディのように見えるこの作品も、岡本喜八の戦争をめぐる映画史の流れの中に位置づけることが出来る。彼は戦争の無意味さに対抗するひとつの方法として、民衆のそのエネルギーの源たる音楽に注目し、この作品を作ったのではないかと思う。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ60~80年代

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