男性飼育法
2005/7/7
1959年,日本,103分
- 監督
- 豊田四郎
- 原案
- 三宅艶子
- 脚本
- 八住利雄
- 撮影
- 安本淳
- 音楽
- 芥川也寸志
- 出演
- 森繁久彌
- 淡島千景
- 花菱アチャコ
- 淡路恵子
- 小林桂樹
- 水谷良重
- 市川悦子
- 三好栄子
- 八波むと志
- 由利徹
- 都家かつ江
- 菅井きん
不動産会社の社長の佐谷伸吉の妻の波恵は女学校の同窓会姫百合会の活動に精力を注いでいた。その佐谷の妹の三代は料亭「まる伊」の主人丸山伊兵衛の後妻におさまり、波恵の妹の多美子は大学で研究者をしている田部と結婚している。それぞれ幸せそうな夫婦なのだが、多美子が田部に相手にされないという悩みを波恵に訴えた頃から、雲行きが怪しくなってくる…
女流評論家三宅艶子のエッセイをもとに八住利雄が脚本を書き、豊田四郎が映画化。森繁と淡島千景というおなじみのコンビが繰り広げるちょっとひねったコメディ。
豊田四郎という監督は存外コメディ作品を数多く撮っている。そして、そのコメディ作品に頻繁に出演しているのが森繁久彌と淡島千景である。この2人といえばもちろんおなじ豊田四郎監督の『夫婦善哉』で共演、これはコメディではなかったが名作コメディ『駅前旅館』でも共演し、この作品はシリーズ化されて24作品が作られたのだから、名コンビと言っても差し支えないだろう。もちろん、多くの場合にはそこにフランキー堺なんかが絡んできて、笑いの部分で活躍するわけだが、森繁のパートナーといえば淡島千景というのはひとつのパターンとして確実にある。
この作品もそんな流れの中で捉えることができ、男女関係をネタに下コメディということになるわけだが、風変わりな点としてはそこにいわゆるウーマン・リブの思想が入り込んでいるというわけだ。ウーマン・リブの観点から、亭主をコントロールするということを考え、それを面白おかしく描く。しかし、時代が時代だけにウーマンリブと言っても男勝りというわけではまったくなく、女房は亭主を立てて内助の功という考え方は維持しつつ、自分の意思を強く持つという精神を説いている。
はっきり言ってプロットはそんなに面白くもない。3組の夫婦のどれもありきたりの構図から外れることはなく(どれかといったら水谷良重と小林桂樹の夫婦がいちばん面白いと思うが)、意表をつく展開などもない。意表をつくといえば、途中で何度か挿入される「女の平和」の演劇シーンはなかなか意表をつくが、この演劇自体がなんだか間延びしていて、地の映画のテンポのよさになじまず、逆に映画全体のリズムを崩して映画の面白さを半減してしまっているような気もしてしまう。
そんな中でコメディとして面白いといえるのは、淡路恵子と花菱アチャコの夫婦である。この夫婦の関係は年寄りの夫と若い妻というパターンの典型からはみ出しているし、この花菱アチャコ演じる夫のキャラクターも面白い。そして、マグロの肝臓を始めとしてこの夫婦のエピソードは周囲とつながって広がるネタを提供してもくれるのだ。だから、主人公は森繁と淡島千景の夫婦でも、映画の展開の中心になるのはこの夫婦の方ということになる。
果たしてそれぞれの夫人の“男性飼育法”がうまく行ったのかどうか… 現在の男女関係、夫婦関係から見るとなんとも牧歌的でのどかで、しかし封建的でもあるという感じが、良くも悪しくも昔の映画っぽい。