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愛の神、エロス

2005/9/16
Eros
2004年,アメリカ=イタリア=フランス=中国,109分

監督
ウォン・カーウァイ
スティーヴン・ソダーバーグ
ミケランジェロ・アントニオーニ
原案
ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本
ウォン・カーウァイ
スティーヴン・ソダーバーグ
トニーノ・グエッラ
撮影
クリストファー・ドイル
スティーヴン・ソダーバーグ
マルコ・ポンテコルヴォ
音楽
ペール・ラーベン
出演
コン・リー
チャン・チェン
アラン・アーキン
ロバート・ダウニー・Jr
エル・キーツ
クリストファー・ブッフホルツ
レジーナ・ネムニ
ルイザ・ラニエリ
preview
 病気の女性を見舞う仕立て屋のチャン、女の言葉をきっかけにチャンは彼女との官能に溢れた出会いを思い出す…
 仕立て屋の恋を描いたカーウァイの「エロスの純愛~若き仕立屋の恋」、広告クリエイターの奇妙な夢を描いたソダーバーグの「エロスの悪戯~ペンローズの悩み」、妻との関係に行き詰まりを感じている男を描いたアントニオーニの「エロスの誘惑~危険な道筋」という3人の巨匠が描くエロスを巡る3つの中篇。
 カーウァイの作品が出色の出来だけに、他の2作品は今ひとつ印象が薄い。
review

 カーウァイの「エロスの純愛~若き仕立屋の恋」が面白かったので、まずそれから。
 この作品はよくある話といえばよくある話だ。落ちぶれて行く女がいて、しかしその女を見つめ続ける男がいる。男は女がまぶしかった頃の幻影を見続け、女が堕ちて行っても依然としてまぶしい目で女を見つめる。女はそんな男の純粋さに打たれる。そしてもう一人、女を見つめる世間の目を代表する人物がいる。その人物(仕立て屋の店主)とチャンの間の女の見え方のギャップがこのドラマを形作って行く。
 そのドラマの構造は、突き詰めていけば男にとっての女の魅力、男が女の何に欲情するのかを問うものなのかもしれない。そもそも女が男を惹きつけるのはその表象である。それは単純な外見ではなく、正確や名声や財産など外面に出ている全てのものを意味する。男はそのような表象にまず惹かれ、そこから内側にあるものへと迫って行くのだ。もちろんその表象も内側になる何かから生じるものだが、表象は常に変化して行く。表象を通り越してホアの内側にある何かに魅了されてしまったチャンは彼女の表彰が変化してもその魅力に捉えられ続ける。
 その内側にあるものとは何か。それは基本的には精神的なものである。しかし、精神的であるということがつまりプラトニックであるということにはならない。欲望が肉体的であるというのは表象に捉えられて視点に過ぎない。欲望は内側にある精神的なものと結びつくことでさらに強くなる。欲望もまた精神の動きのひとつなのだから、それは当然のことだ。チャンとホアのつながりはそもそも官能的なものであり、その官能的な接触がチャンにホアを深く理解させるきっかけを生んだ。だから、チャンが精神的にホアに惹かれるとき、チャンの欲望は強まるのだ。
 そのような男に愛されることによって女はいくら体を貶められても、精神的に崇高でいられる。そう書くとメロドラマっぽくなってしまうが、肉体と精神が不可分の中で、欲望のつながりによって精神が救われる。それはなにかすごく不思議な魅力をもつ物語である。

 ソダーバーグの「エロスの悪戯~ペンローズの悩み」はソダーバーグらしい観客を驚かすことをひとつの大きな狙いとした作品だ。見終わって考えると、もうひとつの狙いはやはり男の欲望であることがわかる。特に覗き見と浮気の欲求、夢とはそのような欲求を象徴する場所であり、夢の中では現実ではできないことも出来てしまうというそんな笑い話だ。

 アントニオーニの「エロスの誘惑~危険な道筋」はふたつとは逆に女の欲望を描いた作品だろう。問題はその女の欲望が女の自発的なものなのか、男の欲望を受け止めて生じるものなのかということだ。クリストファーの妻クロエは自ら欲望するタイプであるように思える。自ら男を挑発し、男の欲望をかきたてるタイプだ。それに対してリンダは男の欲望に答えて自らの欲望を発露させるタイプだ。それを象徴しているのはふたりの服装の違いだ。クロエはこれ見よがしに露出的な服装をし、リンダは肌を隠すような格好をしている。しかし、リンダは隠すことによってひそかに挑発してもいる。服装もそうだし、リンダが住む塔というのも堅牢な城砦であると同時にペニスを象徴する淫靡な形象を持っているのではないか。そして最後でも、リンダが裸でただ横たわるのに対し、クロエは踊る。ひそかに男の欲望を掻き立て待つ女と、積極的に男を挑発する女、そのふたりの出会いはいったい何をもたらすのか。

Database参照
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国別・年順: アメリカ2001年以降

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