ラブ・アクチュアリー
2005/9/21
Love Actually
2003年,イギリス=アメリカ,135分
- 監督
- リチャード・カーティス
- 脚本
- リチャード・カーティス
- 撮影
- マイケル・コールター
- 音楽
- クレイグ・アームストロング
- 出演
- ヒュー・グラント
- リーアム・ニーソン
- エマ・トンプソン
- アラン・リックマン
- コリン・ファース
- ローラ・リニー
- キーラ・ナイトレイ
- ビル・ナイ
- ローワン・アトキンソン
- ビリー・ボブ・ソーントン
クリスマスを数週間後に控えたロンドン、元ロックスターのビリーは昔のヒット曲を焼きなおしたクリスマス・ソングをレコーディング、新しく首相となったデヴィッドはスタッフのひとりに恋をしてしまう。さらには最愛の妻を亡くし、義理の息子を抱える男、恋人と弟の浮気を目撃してしまった作家、2年以上も片想いを続ける内気なOLなど、ロンドンに住むさまざまな人々の恋模様をモザイクのように描く。
『ノッティングヒルの恋人』などで知られる脚本家のリチャード・カーティスの監督デビュー作、豪華キャストに支えられて、非常にいい作品に仕上がっている。
ヒュー・グラントといえば、金持ちのドラ息子がお決まりで、イギリスの首相という設定はなかなか無理があるとは思うが、そんな無理もほんのひとつのエピソードに過ぎないということで薄められ、全体的には非常にいい作品になっていると思う。それぞれのエピソードが切なさと暖かさを含み、それが相互に微妙に重なり合う。
エピソードの数を数えることも難しい、ただそのどれもが始まりは孤独や悲しみである。恋人に裏切られた男、親友の結婚相手と打ち解けられない男、2年以上も恋を打ち明けられない女、最愛の妻を失った男、などなど彼らは孤独や哀しみという自分自身の空洞から新たな物語を紡ぎ始めるのだ。そしてその新たな物語の結末はそれぞれに違えど、彼らは最終的には大切な人を見つけることが出来るのだ。
しかし、この作品が面白いと思うのは、全てのエピソードがそのパターンにははまっていないトイことだ。いかにもラブコメらしい大団円のエピソードもあれば、幸せが簡単なきっかけで崩れてしまうエピソードもあり、いろいろあったけれど結局は元通りというエピソードもある。その絶妙な配分がこの映画を単純なラブコメであることを避けさせている。
人生はもちろん全てがハッピーエンドではない、でもどこかで自分が大切に思う人と気持ちが通じ合えば、それは幸せな経験なのではないか。言葉として書くとくさいけれど、この映画からはそんなメッセージが伝わってくる。そして、その大切な人もいつも身近にいることで自分がその人を大切に思い、愛しているということをついつい忘れてしまいがちになる。たとえば、リーアム・ニーソンが義理の息子に「かあさんにもっと“愛している”と言っておけばよかったと後悔している」という言葉に、それは表れている。
この映画が語りかける事はただひとつ「大切な人のことを思う」ということだ。本当に大切な人のことを思うとき、たとえその思いを遂げられないとしても、相手のことを深く考えるものだ。そして、怖れや躊躇を脱ぎ捨てて、相手の気持ちだけを考えるようになるものだ。結婚したカップルとその親友のエピソードの切なさなどからそのことがストレートに伝わってくる。
そんなことを考えていたら、日本にキリスト教を布教に来た宣教師たちが「愛」という言葉を「お大切」という言葉に翻訳したということを急に思い出した。愛するということは人を大切に思うこと。そんなくさい言葉が似合う良質の群像劇、ラブコメが好きという人はもちろん、ラブコメなんてどれも同じと思っている人でも、ついつい引き込まれてしまう作品だと思う。