4thフロアー
2005/11/6
The 4th Floor
1999年,アメリカ,91分
- 監督
- ジョジュ・クラウスナー
- 脚本
- ジョジュ・クラウスナー
- 撮影
- マイケル・スロヴィス
- 音楽
- ブライアン・タイラー
- 出演
- ジュリエット・ルイス
- ウィリアム・ハート
- シェリー・デュヴァル
- オースティン・ペンドルトン
- トビン・ベル
- ロバート・コンスタンゾ
インテリア・コーディネーターのジェーンは、事故でなくなった伯母が住んでいた部屋に越すことにするが、恋人で天気予報士のグレッグに反対され、さらに他の階に住む人々が奇妙な人ばかりだった。さらに、下の4階の住人から騒音がうるさいという警告状を突きつけられる…
集合住宅のトラブルを題材にした、ホラー映画。それなりに怖く、つくりもしっかりしているが、どこを切ってもどこかで見たことがあるような作品でオリジナリティが感じられない。
はじめは、引っ越してきたアパートの下の階の住人に気味の悪い形で苦情を言われているだけという話だが、それがどんどん奇妙な方向に進んでいき、誰も彼もが怪しくなって行くという展開。そこに伯母さんの死の謎なども絡められて、いつしか犯人探しの様相を呈してくる。そうなると、アパートのほとんど全ての住人が奇妙な人々で怪しく見えてくるし、向かいの建物に住む錠前屋も怪しくなってくる。この誰も彼もが怪しく見えるというのは、サイコ・スリラーを盛り上げるのに不可欠な要素なので、その点ではこの作品はなかなかうまく出来ている。
しかし、それだけというか、そのような設定を作り上げるために使われている手法はどれもこれも他の映画で見たことがあるようなものばかりである。なんと言ってもわかりやすいのは、物語が奇妙な方向に展開して行くきっかけとなる向かいの建物での事件らしきものの目撃で、これは明らかに『裏窓』である。それ以外にもねずみが大発生するとか、壁に奇妙な文字が書かれているとか、どうもどこかで見たことがあるぞ… というものばかりが登場する。
これは、この作品の脚本・監督を務めるジョジュ・クラウスナーに独創性がないということに尽きるのかもしれないが、このひとの作品に限らず、ホラー映画というのは同じことの繰り返しであることが多い。その中でずば抜けたオリジナリティを持つものが時々出現し、ヒットしたり、カルト的な人気を誇ったりするわけだ。この作品はそのような独創的な作品ではない有象無象の無数のホラー作品のひとつでしかないことは明らかだ。
しかし、そのような作品の中ではなかなかで気がいいほうではないかと思う。なんと言っても、最初にも書いた「誰もが怪しく見える」という設定の作り方のうまさ。その「誰もが」の範囲には、アパートの住人だけでなく、同僚やはては恋人まで含まれて行くのだ。それによって、「こうなるんじゃないか」という観客の予想を微妙にずらし続け、観客を映画に引き込んで行く。その辺りでこの作品は見られる作品になっている。
しかし、他方でホラー映画としての恐怖の部分は今ひとつといわざるを得ない。この作品で観客を怖がらせるのは、ほとんどがいきなり大きな音がなるとか、気持ち悪いものを映すといった、いわゆる「チープ・トリック」である。「チープ・トリック」は確かに見ているときはドキッとして怖がったような気分になるが、それはただ驚いただけのことで心が凍るような恐怖ではない。全体的に見て、誰もが腹に一物持っているという感じの怖さが表現されていると見ることは出来るが、その展開は映画の結末に至る前に容易に想像できてしまい、見終わったところでその怖さが続く事はない。後に残るのはむしろ「チープ・トリック」に使われた気持ち悪い映像の後味の悪さだけだ。そのあたりが、最後まで見終わったときに「なんだかね」と思わせてしまう要因だろう。
展開的にはなかなか面白いものがありながら、チープ・トリックの質の悪さで全体的にはどうも悪趣味なものに見える。もっと複雑な陰謀があり、ただ奇妙に見えただけの人々とされた人たちがその陰謀に関わるか、逆に彼女の味方として活躍すれば、物語に一体感が生まれ、もっとドライブ感が生み出されたのではないかと思う。