星降る夜のリストランテ
2005/11/27
La Cena
2000年,イタリア=フランス,108分
- 監督
- エットレ・スコーラ
- 脚本
- エットレ・スコーラ
- フリオ・スカルペッリ
- シルビア・コスラ
- 音楽
- アルマンド・トロヴァヨーリ
- 出演
- ファニー・アルダン
- マリー・ジラン
- ヴィットリオ・ガスマン
- ジャンカルロ・ジャンニーニ
- ステファニア・サンドレッリ
ローマにあるリストランテ“アルトゥーロの店”、女主人のフローラは今日もいっぱいの店を元気に切り盛りしている。常連の老詩人、派手な母親と地味な娘、喧嘩をする父と娘、自信なげな一人の男、初老の教授と若い学生…
お客たちの会話と、ウェイターと厨房と女主人、病気療養中の主人との関係にウィットと温かみが漂う佳作。
この映画は、ファニー・アルダン演じる女主人フローラの暖かさに包まれて、非常に暖かい雰囲気の映画になっている。確かに、お客と、それにスタッフの会話にはとげとげしいものも多く、対立なども生じるのだが、それでもそれはこのリストランテという場所で交差する人生の1ページでしかなく、物語が暗いなものになるほど深刻な対立ではない。リストランテというある種の家族にお客たちが招かれているという雰囲気。そんな理想的なレストランがここには描き出されているのだ。
そして、そのような雰囲気の中でそれぞれの会話が進行する。常連の老詩人が狂言回しのようにして、行き詰まりそうな会話、こじれそうな関係の進行にそっと手を貸してやることでまた会話はスムーズに展開して行く。
そして、その老詩人の関与は、人々の会話の裏にある心持ちを表現するのを助けることもある。この映画の会話のほとんどが対立的というか、喧嘩に近いものであるのに、全体の雰囲気が暖かいものになる最大の要因は、その会話から伺い見られるそれぞれの心持ちには、相手を思いやる気持ちがあったり、新しい友情や関係が生まれる暖かさがあったりするからだろう。大学教授がいきなり苛立ちわけのわからない哲学談義を披露するところも、荒々しく騒々しく、さらにその裏に隠された意図は利己的なものではあるが、そのようにして目的を達した後、彼は急に快活になって店の人に言い訳をしたりするのではなく、そのまま沈んでしまっているのだ。そして最後に老詩人が彼に話しかけ、彼が自分自身が打算的に発した言葉の中から真実を発見してしまい、それによって本当に疑問を発してしまったことが明らかになる。彼は、ちょっとした遊びのつもりで手を出した女学生から、何十年もかかって育て上げた哲学者としての信念を揺らがされてしまったのだ。それは彼にとっては重大事だが、彼の利己
心の報いであり、因果応報、落ち着くところに落ち着いたという感じがして、観客は安心する。
確かに、日本人という設定で登場している親子が韓国語を話していたり、話が多岐にわたりすぎていて、全体としてまとまりがないという欠点はあるが、人々が交わるということは、このように騒々しく、真偽が入り混じり、対立があり和解があり、出会いがあり別れがあるものに違いない。レストランという、社会の縮図と言われるようなところの、ほんの数時間を描くだけで、それを表現し、しかも暖かい気持ちにさせる。それだけで、この映画はなかなかのもの、見る価値がある映画であると思う。
『星降る夜のリストランテ』という題名もロマンティックすぎる気はするが、この映画の雰囲気をよく表して入る。まさに星が降るような寒い夜にでも観たい作品だ。