バッド・サンタ
2005/12/11
Bad Santa
2003年,アメリカ,91分
- 監督
- テリー・ツワイゴフ
- 脚本
- グレン・フィカーラ
- ジョン・レクア
- 撮影
- ジェイミー・アンダーソン
- 音楽
- デヴィッド・キティ
- 出演
- ビリー・ボブ・ソーントン
- トニー・コックス
- ローレン・グレアム
- バーニー・マック
- ブレッド・ケリー
相棒の小人のマーカスと毎年クリスマスになるとサンタクロースの装束で子供たちの相手をするウィリーは実はクリスマスの売上を狙う金庫破りだった。今回も見事に成功し、ウィリーは引退すると宣言してマイアミに移住するのだが、クリスマスが近づくとまたマーカすから電話がかかる…
コーエン兄弟がプロデュースして、『ゴーストワールド』のテリー・ツワイゴフが監督したコメディ。クリスマスらしからぬ悪趣味さ加減が見所か。
クリスマス映画というのは、どんなものでも一応は子供に見せてもいいものをつくるわけだが、この作品はその常識を覆し、悪趣味なクリスマス映画となっている。その証拠に日本でもPG12という規制がかかり、ファミリー向けとはとてもいえない映画だということが公にも認められた。
そんな映画だから逆に面白いかと期待するわけだが、大人向けのブラック・コメディと考えると、それほどきついものではない。確かに、ビリー=ボブ=ソーントンが演じるサンタのキャラクターは悪趣味で面白いが、結局はただだらしがないだけで、“ブラック”な印象はないし、最終的にはヒューマンな方向に進んで行くからその悪趣味な感じも薄められる。
前半のあくがもっと強ければ、最後の部分とのギャップにひきつけられるのだけれど、前半部分がそれほどきつくないので、後半にはヒューマンな感じになって行くんだろうなぁ予感が感じられてしまって、驚きがない。笑いも感動も予想とのギャップから生れるものである。だから、ギャップがないと笑いも感動も生まれにくく、この作品にはそのギャップがない。だから、コメディとしても、ヒューマンドラマとしても今ひとつという中途半端な感じになってしまうということである。
せっかく小人の俳優を起用して、「不当解雇」なんていうキーワードまで使っているんだから、そこをもっと使って差別的でブラックなネタを駆使したり、セックス中毒のウィリーの“症状”をもっとクロースアップしてみれば、大人向けのブラックな映画になったと思うのだが、クリスマス映画だけにそこまでの踏ん切りはつかなかったのか。
コーエン兄弟は脚本や監督としてではなく、プロデューサとして参加しているだけだから、この作品がコーエン兄弟の作品といえるかどうかは微妙だが、コーエン兄弟の作品と比べると、どうにも思い切りが悪いとした言いようがない。プロデューサとして作品を作るときには、自分たちでは作ることのできない少し毛色の違った作品を作ろうとすることが多いが、この作品はなんだかコーエン兄弟の作品を薄めただけの感じの作品になってしまっている。同じ年にコーエン兄弟は『ディボース・ショウ』というコメディを撮っているが、これまた今までの作品と比べると薄まった感じの印象があった。
コーエン兄弟の才能は枯渇してしまったのか、それとも大物になってしまったがゆえにあくの強い作品をとれなくなってしまったのか。もし大物になって普通の作品しかとれなくなってしまったのなら、(リュック・ベッソンのように)プロデュース作でこそあくの強い作品を作って欲しいと思う。この作品はもしかしたらそのような狙いが何らかの圧力もあって失敗してしまった作品なのかもしれないが、こうつまらない作品が続くと、コーエン兄弟の作品も見る気がなくなってきてしまう。
とういうわけで『レディ・キラーズ』も見ていないのではあるが…