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ピッチブラック

2005/12/17
Pitch Black
2000年,アメリカ,108分

監督
デヴィッド・トゥーヒー
脚本
ジム・ウィート
ケン・ウィート
撮影
デヴィッド・エグビー
音楽
グレーム・レヴェル
出演
ラダ・ミッチェル
コール・ハウザー
ヴァン・ディーゼル
キース・デヴィッド
ルイス・フィッツジェラルド
preview
 事故により操縦不能に陥った宇宙船が、未知の惑星に不時着。護送中の凶悪犯が脱走してしまう。そこは、何とか呼吸はできそうだが、一面砂漠の死の惑星で、以前調査隊がいた施設を発見するが、そこにはひとりの人間も残っていなかった…
 無人の惑星に孤立する人々というSF無人島もの。脚本家として知られるデヴィッド・トゥーヒーの3本目の監督作品。続編も作られた。
review

 エイリアン・パニックものとしてはごくごく普通の作品という感じだが、3つの太陽がある惑星というアイデアがなかなか面白い。まず、その太陽のスペクトルの違いから、時間によって光の色合いが変わり、それが画面に反映される。到着したときはまぶしいほどの白い光で照らされていたのが、その太陽が沈み、青い太陽が昇ると、全体が青く見える。これはもちろんフィルターを使用しただけのことだが、その見え方の違いというのがなかなか面白い。しかし、それが見れたのも最初だけ、この変化もうまく使えれば面白くなったような気がしたのだが、結局当たり前の人物設定と当たり前の展開に終始し、誰が次に死ぬのかという予想も大体当たるパニック映画の王道という感じになった。
 さて、この映画には『エイリアン』のエイリアンの亜種ともいうべき、獰猛なエイリアンが登場するわけだが、考えてみれば、ここでは人間のほうがエイリアンなのであり、この星に住む彼らにしてみれば、侵入してきたエイリアンをただ殺しているに過ぎない。が、彼らが獰猛で低脳であるように設定されているがゆえに、人間がそれらを殺すことが正当化されているわけだ。
 これが、無人島ものの変形であることを考えると、これは非常に興味深い。なぜならば、無人島ものは先住民を原始的で凶暴な“エイリアン”とみなしてきたという歴史があるからだ。有名なのはシェイクスピアの『テンペスト』のキャリバンであるが、この作品が書かれたのはおよそ400年前、400年たっても他者を“エイリアン”として排除しようとする人間の性質は変わっていないということか。

 まあ、もちろん、この映画はそんなことを描いた作品ではない。誰にとっても間違いなく“エイリアン”であるようなエイリアンを使っているから、そこが問題になることはないのだ。その意味では『スターシップ・トゥルーパーズ』にも似ている。人間が獰猛で凶暴なエイリアンを殺戮し続ける。それは人間の暴力性のガス抜きをするという意味で、爽快な物語なのである。だから、フライとリディックは格好よく、ヒーローになりうる。人間のエイリアンに対する恐怖心を振り払い、それらをなぎ倒して行くからだ。
 このような娯楽映画である以上、それは無害だし、面白からいいと思う。ただ、ジョン・カーペンターの『ゴースト・オブ・マーズ』のように、そのエイリアンが人間の姿をとったときはどうなのか。そんなことを考えながらも気持ちよく映画を見た。

 それにしてもこの作品、どうもプロットに飛躍するところがあって(例えば、フライが穴の中に探検に行くとき、その前に誰が行くかなどの議論があるのが自然な気がしたが)、かなりカットされているのかな、と思っていたら、ディレクターズ・カット版が出ていた。そっちなら、もう少し展開が違ってくるのだろうか。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ1990~2000

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