わが家の犬は世界一
2006/1/11
Ka la shi tiao gou
2002年,中国,100分
- 監督
- ルー・シュエチャン
- 脚本
- フォン・シャオガン
- 撮影
- ルー・シュエチャン
- 音楽
- シャオ・ミン
- 出演
- グォ・ヨウ
- ディン・ジャーリー
- シア・ユイ
- リー・ビン
- リー・チンチン
1995年、北京では狂犬病などの問題から犬の飼育に厳しい制限が課せられるようになった。ユイランが夜勤の夫ラオの飼い犬カーラを散歩させていたところ、警察の摘発にあい、登録証のないカーラは警察に没収されてしまった。息子のリアンも心配して友だちの父親である巡査に頼みに行くがうまく行かない…
中国第六世代の監督のひとりルー・シュエチャンが撮った新しい中国らしいコメディ映画。それなりのできだが、少しまとまりがないか。
中国映画には重厚な作品も多いが、最近はこんな小品が多い気がする。変わり行く中国の自由化の象徴なのか、それとも日本人に受けいられるような作品はこんな作品しかないと配給会社が判断してるのか、とにかく最近の中国映画というとこんなものばかりである。
そんな中で、犬がモチーフになっているというのはおもしろい。飼い犬がかわいいのはどこの国でも一緒だが、飼い犬の管理が行き届いていないのはいかにも中国という感じがする。ラオが登録をしないのは登録料が高いからということなのだが、この映画ではなぜかその登録料の具体的な金額が明らかにならず、やっと5000元と明らかになっても、それがどれくらいの大金なのかは今ひとつイメージとしてつかめない。ラオは「俺の給料はいくらだと思ってるんだ」というけれど、いくらかは言わない。おそらく数十万だろうという感じは最後のほうになってつかめるが、前半は何故登録料を払おうとしないのかもとんとわからない。 加えて、息子との関係などもわかりにくく、終盤に来るまでなんともまとまりがないという印象が強い。
コメディとしても、あまり笑える部分はないし、笑いを誘おうとする展開も読めてしまう。
見ていておもしろいのは、ラオのくたびれた感じで、このいかにもリアルな中国人の暮らしというのはいい。どうしようもなく貧しいというわけではないが、決して金持ちではない。着ているTシャツはくたくたにくたびれ、家には電化製品もほとんどない中の下といった感じの生活。その中で犬の存在は大きい。犬はラオにとっての癒しであり、家族をつなぎとめる絆でもある。その犬がいなくなったことで、家族の間に潜在的に存在していた問題が浮上してきて、その間がギクシャクする。しかし、それはいままで引き伸ばされてきた問題を解決するきっかけにもなるのだ。
そんなことがこの映画のテーマであり、それはよくわかる。でも、そのことがテーマであるにしては、展開が遅く、観客をその展開にひきつけた頃に、映画は終わってしまうのだ。それに、このテーマ自体はなんともありきたりでそれだけで見せるには不十分なものという感じがしてしまう。
もっと家族の中で犬のカーラがどのような存在で、カーラがいなくなることで家族の関係がどう変化し、カーラを取り戻すことがどう重要なのか、そしてどう難しいのか、ということをしっかりとしかしテンポよく描いていければ、もっとおもしろい映画になったような気がする。継続する日常を切り取ったというリアルさという狙いはわかるが、あまりに前後がなさ過ぎて全体像をつかみにくいのが、エピソードがバラバラだという印象につながってしまったのではないかと思う。