犬好きの少年オーウェンは３ヶ月犬の散歩のバイトを続けたら犬を飼っていいといわれ、バイトを続け、今日がその３ヶ月目だった。そのオーウェンが住む町の近くにＵＦＯが墜落、そしてそこから一匹の犬が。いつものように散歩のバイトをするオーウェンがその宇宙から来た犬に出会う…
　犬が宇宙から来たエイリアンだとするインパクトのある設定から生まれたハートフル・コメディ。犬好きのヒト、犬がいるファミリーにはオススメできる作品。

　なんと言っても芸達者な犬たちがかわいいから、犬好きならば、見ていて飽きることはない。さすがハリウッドにはすごい犬たちがいて、いろんな芸をこなす。しゃべっている部分はもちろん特殊効果だが、犬の動きは基本的にＣＧではなく、実際に犬に仕込まれた芸だろう映画を見ているだけでもわかる。
　ＤＶＤには特典映像として“ドッグ”メンタリーという撮影裏話が収録されているが、これがなかなかおもしろい。犬をトレーナーが操作し、その声が飛び交う中で人間が演技をする。そして、ＣＧを使ったのは１箇所だけで、しゃべっている部分はアニメーションだと解説する。アニメーションとは、つまりモーションキャプチャーであり、実際の犬の様々な表情を組み合わせて、その間をＣＧでつないで行くというわけだ。だから、ＣＧと言ってもグラフィックよりは合成技術に近いのではないかと思う。それによっていわゆるＣＧよりもリアリティが出たし、犬に親しみもわく。
　最近の映画はほとんど全ての映画にＣＧが使われている。ＣＧ技術は日進月歩だが、やはりＣＧにはどこかぎこちなさが残る。この作品はそのぎこちなさを最小限にするために苦心して本物の犬で撮影をしたわけだ。ＣＧはＣＧで予算もかかるし大変だと思うが、最終的には思ったように作ることが出来る。しかし、生身の犬が相手となると、どこかで妥協が必要になる。そして、映画とは様々な制約の中で妥協を繰り返すことで出来るものだから、そのほうが映画らしくなると私は思う。ＣＧは映画の制約を乗り越えるものとして発展し続けているわけだが、やはり映画は天候などのどうにもならない制約の中で工夫することによって生まれたほうがおもしろいのではないか。

　さて、これはまさしく犬の映画である。ペットが出て来るファミリーものというと、基本的に子供の成長物語という感じの話が多いが、この作品はそのような説教臭い部分はほとんどない。主人公のオーウェンはものすごくオトナで物分りがよく、冷静で、むしろ両親のほうが子供だ。成長物語というなら、オーウェンの成長物語というよりはオーウェンの母親の成長物語だ。
　それよりも物語の中心になるのは人間と犬の関係、4000年の歴史がある人間と犬との友情を通して、“友情”や“愛”について考えさせることだ。犬は人間の生活に深く入り込んでおり、犬なしの世界など考えられない。それは、犬を飼っている人、犬好きの人は特に強く感じることだろう。この映画はそのような人々の感情をうまく利用して、人と犬との関係を考えさせる。
　犬と人とを同一視することは問題だが、その人と犬との関係から、人と人との関係を考えることは可能だ。人生から犬を奪われるということの意味は、そのこと単独の意味で捉えただけでは意味がなく、犬以外の人間との関係の中で考えなくてはいけない。
　主人公のオーウェンに友達がいないという設定は犬が友だちの埋め合わせをするということを意味するわけだが、犬を通じて新しい友達が出来る可能性にもつながるし、逆に犬だけが友だちという一生も考えることが出来る。
　この作品に登場する４匹の犬たちの飼い主は、登場場面こそ少ないが、よく見ればそのようなことを考えることが出来るような設定になっている。それは、いわゆる幸せな家族（アフリカ系）、ゲイのカップル、犬に愛情を注ぐ独身のオバさん、いつも犬と公園で過ごす孤独な老人である。彼らと人々との関係、そして犬との関係は、誰の周りにもありえる関係だということが出来るのだ。そして、同時にそれはアメリカ社会の縮図ともなっているだろう。
　まあ、そんなことはこの映画には余計な解説かもしれないが、そのように繊細に設定が作られているというのが、この映画をおもしろくしているのかもしれないとも思うのだ。