続鉄砲犬
2006/2/16
1966年,日本,88分
- 監督
- 村山三男
- 脚本
- 藤本義一
- 撮影
- 石田博
- 音楽
- 大森盛太郎
- 出演
- 田宮二郎
- 天知茂
- 坂本スミ子
- 久保菜穂子
- 渚まゆみ
- 河津清三郎
- 見明凡太郎
ある夜、2台の車が銃撃戦を起こし、警官がひとり撃たれる。一方、一匹狼のピストルの名手鴨井大介はある夜バーで一人の女に出会い、その女・京子の頼みで父親という古美術商の秋津の持つ古美術を東京まで運ぶ際の用心棒の仕事を頼まれる。そして、鴨井は東京に向かう…
田宮二郎の「犬」シリーズの第6作。舞台を東京に移すが、木村刑事(しょぼくれ)も東京にやってくるので、基本的にはいつもと同じ。
「毎度どーも」と鴨井大介はスクリーンにやってくる。飄々と笑みを浮かべて、素寒貧で、しかし余裕たっぷりで。登場するメンバーにほとんど変化がないこのシリーズは6作目にして完全にひとつのパターンを作り上げている。舞台を東京にしたところで、登場する人々が同じなら何も変わらないし、主要人物のほとんどは大阪からやってきており、大阪弁をしゃべる。これは完全なワンパターン、マンネリである。
もちろん、鴨井大介(田宮二郎)と木村刑事(天知茂)の名コンビは見ていて楽しい。だからこのふたりは常にこのシリーズの中心にいなければならないと思うし、坂本スミ子も作品のスパイスとして不可欠だ。しかし、シリーズがシリーズとして変化しながら続いて行くためにはそれ以外の出演者にアクセントが必要だろう。久保菜穂子や渚まゆみではなんともインパクトが薄いし、敵役はすでに何度か登場していると思われる河津清三郎や杉田康である。ヒロインや敵にもっと大物が登場してくれば、作品に変化が感じられて面白みも増すのだろうが、この完全なマンネリは作品のおもしろさを擦り切れさせているに過ぎないという気がしてくる。
このシリーズの残り3作の中で期待が持てるのは小沢昭一と江波杏子が再登場する『早射ち犬』くらいだろうか。田宮二郎や天知茂と拮抗するような強いキャラクターが登場してこないと、辛い。
さて、この「犬」シリーズの“犬”とは田宮二郎演じる鴨井大介が野良犬のようであることからつけられていると考えられ、この作品でも最後に鴨井は自分を「野良犬のようなもの」と言っているが、シリーズが進むにつれて、別の意味が含まれるようになって来たと思う。
それは「警察の犬」という意味である。鴨井は結局いつも悪者を警察に突き出す。これを鴨井は「しょぼくれの月給を上げるため」というし、このコンビが映画の中心である以上それはさけられない結末ではあると思うのだが、いつも最後に悪者が警察に捕まるというチンピラもののシリーズというのも珍しい。一般的にはチンピラというのは警察を嫌い、警察に密告するようなやつは“犬”として蔑まれる。しかしこの作品では鴨井は常に“警察の犬”であり、しかもヒーローなのだ。
そこからわかるのはこの作品がそのチンピラの世界を描いたものではなく、ある意味では刑事ものの範疇に含まれるようになってきているということだ。警察ではないが、結果的には警察に協力して犯人を捕まえる存在に鴨井大介はなっている。シリーズの最初では警察に反発していたのに…
これで結局鴨井大介はヤクザの世界からはだんだん鼻つまみ者となってゆき、物語を作りにくくなってきてしまったのではないかという気がする。この時代、スターを起用した様々なシリーズが作られた中で、このシリーズが比較的短命に終わったのにはそのような理由もあったのではないか。