THE 有頂天ホテル
2006/3/10
2005年,日本,136分
- 監督
- 三谷幸喜
- 脚本
- 三谷幸喜
- 撮影
- 山本英夫
- 音楽
- 本間勇輔
- 出演
- 役所広司
- 松たか子
- 佐藤浩市
- 香取慎吾
- 篠原涼子
- 戸田恵子
- 生瀬勝久
- 麻生久美子
- YOU
- オダギリジョー
- 角野卓造
- 寺島進
- 川平慈英
- 原田美枝子
- 唐沢寿明
- 津川雅彦
- 伊藤四朗
- 西田敏行
ある年の大晦日を迎えた都内の高級ホテル“ホテル・アバンティ”、数時間後には新年のカウントダウンパーティーもあり、あわただしさの真っ只中に会ったが、そんな中ベルボーイの只野の送別会が開かれ、政治スキャンダルの渦中にある政治家武藤田が滞在してマスコミが詰め掛けていた…
三谷幸喜が、オールスターキャストで作り上げたいわゆるグランド・ホテル形式のコメディ。細かいネタが無数にあるという印象。
題名の『有頂天ホテル』はおそらくフレッド・アステアとジンジャー・ロジャース主演の『有頂天時代』と映画の中でも言及されるグレタ・ガルボ主演の『グランド・ホテル』から取られたと思われる。『グランド・ホテル』のほうは、グランド・ホテル形式という言葉があるくらいで、この作品のようなひとつの場所にたくさんの人が集まって、いろいろな事件が起きるという作品の古典として有名だから、この作品がその『グランド・ホテル』をモチーフにしているのはよくわかる。
『有頂天時代』のほうは見てないので、どのあたりがとられているのかわからないが、この『有頂天時代』はもともとブロードウェイのミュージカルであり、アステア&ロジャース以前に一度映画化もされている。(小林桂樹主演の新東宝の映画にも『有頂天時代』という作品があるが、多分関係ない) まあ、ブロードウェイとハリウッドの古典を愛し、これまでもそれらの作品を(いい意味で)パクって来た三谷幸喜だから、この作品もその線で見て間違いないだろうが、どこが似ているとか似ていないとかいうことはまったく意味がない。彼にとっては映画でもドラマでも演出するということは模倣なのであり、パロディなのだから、それを取り立てて云々言ってもしょうがないという気がする。
さて、映画のほうだが、とにかく小ネタの連続という感じで、映画全体を通しての印象というのはあまりに薄い。はっきり言って物語らしい物語というものもないし、展開が気になるという話でもない。アヒルとか、写真とか、謹賀新年とか、フライトアテンダントとか、鹿とか、とにかくいろいろなネタがあって、その一つ一つはそれなりに面白から、映画もなんとなく楽しめてしまうという感じの作品なのである。
これだけいろいろな種類の笑いが用意されていて、これだけ豪華な出演者が出ていたら、どんな人でもどこかで引っかかって笑ったりおもしろがったりできるだろう。それがこの作品に悪評が出ない理由だと思うし、実際見ればおもしろい。ただちょっと長すぎるのが難点ではあるが。
それでも、物語のまとまりのなさと映画自体の長さも、映画を動きのあるワンシーン・ワンカットの映像で組み立てたことによってカバーされてはいる。このワンシーン・ワンカットは映像の流れのスムーズさからいっておそらくアメリカのテレビドラマなどでよく使われるステディ・カムを使ったものだろう。三谷幸喜のドラマで今まで使われたかどうかはわからないが、日本でも多くのドラマで使われている。
そう考えると、この映画は三谷幸喜がドラマで培ってきた人脈と技術を動員して作った映画だということがいえる。テレビでやっていることをとにかく大規模にやってみた。そんな作品だろう。
ちなみにだが、エンドロールを見ていたら「ドンキホーテ♪サンチョパンサ♪ロシナンテ♪」という耳に残る歌の作詞作曲は甲本ヒロトだった。そのあたりの細部へのこだわりが、この作品のおもしろさなのだろう。