寄席の脚光
2006/3/15
luci del Varieta
1950年,イタリア,96分
- 監督
- アルベルト・ラトゥアーダ
- フェデリコ・フェリーニ
- 脚本
- アルベルト・ラトゥアーダ
- フェデリコ・フェリーニ
- トゥリオ・ピネッリ
- エンニオ・フライアーノ
- 撮影
- オテッロ・マルテッリ
- 音楽
- フェリーチェ・ラトゥアーダ
- 出演
- ペッピノ・デ・フィリッポ
- カルラ・デル・ポッジョ
- ジュリエッタ・マシーナ
- ジョン・キッツミラー
手品や踊りを見せる旅芸人の一座、売上を宿屋の主人に差し押さえられてしまい、無一文で次の公演場所へと向かう。その一座に加わろうと同じ列車に乗り込んだリリアーナは花形役者のケッコに売り込むが、ケッコが手を出そうとしたので、平手打ちを食らわせた。
フェリーニがラトゥアーダとの共作の形で監督デビューした作品。すでにフェリーニ夫人でフェリーニ作品の常連となるジュリエッタ・マシーナも出演。
この作品にまつわるエピソードとしては、フェリーニが一時、旅芸人の一座について脚本化のようなことをしながら地方を回っていたという話をフェリーニがしていたというのがある。しかし、フェリーニが一緒に旅してまわったというファブリッツィはこれを否定し、フェリーニが旅回りをしていたという頃、フェリーにとはローまでたびたび会っていただけだと語った。
フェリーには自らを「嘘つき」というだけに、これも嘘だったというわけだが、フェリーニにとってこの“旅芸人”という発想が何か重要だったということはわかる。彼の映画にくり返し登場するある種異様な人々の行列、それもこの“旅芸人”あるいは“見世物小屋”のイメージに通じるのではないか。彼の映画史を通じて観ることができるそのようなイメージが、彼の最初の監督作品に見られるというのはおもしろい。特に、リリアーナを気に入った地方の弁護士が彼ら一座を屋敷に招いて、みなで山道を歩くシーン、この生き返りの行列にはフェリーニなりの芸人というもののイメージが投影されているように思えるのだが。
とはいえ、作品としてはそれほどすごい作品というわけでもない。プロットはきわめて単純だし、登場人物たちも突飛でおもしろい人たちが出てくるわけではない。この程度の話ならそこらにいくらでも転がっているという感じである。
ただ、映画の組み立て方は非常にしっかりしているので安心して観ることができる。旅芸人たちが無一文でやってくる町が城壁で囲われたいかにも小さな町であることが、町の入り口の数秒のショットで表現されるのに対し、リリアーナが評判を呼んで、凱旋するように戻ってくる大都市ではその景色が鳥瞰で長々と映される。このあたりの映像表現や、モンタージュによるつなぎには、さすがに当時ヨーロッパでも最高レベルにあったイタリアの映画だという印象を受ける。
そして、中心的な役割を演じるふたりの女性は素晴らしい。特にジュリエッタ・マシーナは地味な役柄ながら、非常に印象に残る演技を見せる。フェリーには自分のイメージを俳優に押し付けるのではなく、俳優の持つキャラクターを役に生かして行くと言うが、このジュリエッタ・マシーナはまさにその見本であり、この作品で演じた情深くあたたかい女性をフェリーニの作人でくり返し演じて行くことになる。
共同脚本、共同監督ということもあってか、「いかにもフェリーニ!」という印象は薄いが、それでもそこここにフェリーにらしさが顔を出す。フェリーニの作品を数多く見てから、見直して見るとすごくおもしろいのではないか。