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縞の背広の親分衆

2006/4/19
1961年,日本,91分

監督
川島雄三
原作
八住利雄
脚本
柳沢類寿
撮影
岡崎宏三
音楽
松井八郎
出演
森繁久弥
フランキー堺
淡島千景
団玲子
桂小金治
西村晃
渥美清
ジェリー藤尾
藤間紫
preview
 15年間を南米で過ごして帰国した守野圭助は帰国早々かばんを盗まれてしまうが、早速依然いた組の親分の家に向かう。しかし親分は他界、縄張りは他の組に奪われてしまっていた。さらに組の守り神であるお狸様が道路建設のあおりを受けて取り壊されようとしていた…
 「駅前」シリーズを思わせるキャストで川島雄三が撮った任侠もののコメディ。
review

 川島雄三という監督は変幻自在、重厚な作品やねっとりとした作品も撮ればこんな軽妙な作品も撮る。この作品は森繁久弥が森の石松の子孫という設定で、このあたりはマキノの『次郎長三国志』シリーズから借りてきている印象だが、同時に森繁とフランキー堺、淡島千景とくれば東映のヒットシリーズ「駅前」シリーズを思い出さずにはいられない。だからこの作品は見るまでもなく軽妙なコメディであり、その期待にたがわず徹底的にコメディなのである。だから、とにかく楽しめばいい。それはこれが作られた40年前の現在も変わらない。確かにひとの笑いのツボというのは40年間で変化しているだろうし、そのせいで大爆笑とはいかない。特に風月組の組長とジェリー藤尾の親子が繰り出す英語ギャグは英語に対する日本人の理解度の変化によってまったく質の違うものになってしまった。
 けれど、小市民的な笑いやべたなネタは今でも笑える。森繁やフランキー、桂小金治といった喜劇人は小市民的なネタをやらせたら一級品であり、この作品もそれを利用してコメディとしての面白さの大半を作り上げているというわけだ。
 さらには、淡島千景がそれを後ろから支える。淡島千景は「駅前」シリーズでも森繁とフランキーと組んでいるから息はぴったり、コメディらしい演技もお手の物だ。彼女が啖呵を切る格好よさや真の強さが情けない男たちといい対比になっており、さらに森繁との間の微妙な心理の駆け引きが映画のもうひとつのエッセンスとなってもいる。
 考えてみれば、淡島千景と川島雄三は映画に対するかかわり方、映画にかかわる上での器用さがよく似ているのかもしれない。私は二人とも基本的に喜劇に特性を持っていると思うが、シリアスなものをやらせても一流である。川島雄三の『雁の寺』などは映画史上に残る名作だし、淡島千景は成瀬監督の『妻として女として』などで主役級の印象的な役を演じているし、森繁と共演した『夫婦善哉』ももちろん名作だ。
 そんな淡島千景が出演している川島雄三作品はこの作品を含めて6本ある。『喜劇 とんかつ一代』や『貸間あり』など喜劇が多いが、文芸ものの『真実一路』、『赤坂の姉妹 夜の肌』というドラマもある。どの作品にしても淡島千景は川島雄三の世界にすんなりとはまっている。基本的に地味ではあるが、この作品を見ても彼女の存在があって映画がまとまっているように見える。
 川島雄三は多くの巨匠のようにお気に入りの役者というのを持たなかった。映画会社の移籍が多かったこともあって作品ごとに使う役者は大きく変わり、作風もそれぞれに異なった。その中で淡島千景は比較的よく使われ、印象に残る存在感を放った。川島雄三や淡島千景のようなタイプのアーティストが私は好きだ。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本60~80年代

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