ぼくセザール 10歳半 1m39cm
2006/4/22
Moi Cesar 10 ans 1/2. 1m39
2003年,フランス,99分
- 監督
- リシャール・ベリ
- 脚本
- リシャール・ベリ
- エリック・アスス
- 撮影
- トマ・ハードマイアー
- 音楽
- レノ・イザーク
- 出演
- ジュール・ストリュク
- マリア・デメディロス
- ジャン=フィリップ・エコフェ
- ジョセフィーヌ・ベリ
- マボ・クヤテ
- アンナ・カリーナ
パリに住む少年セザールは10歳半、1m39cm、ちょっと太め。体格がコンプレックスだが、親友のモルガンは背も高く、スタイルもよく、成績も優秀。転校生のサラに恋するが所詮はかなわぬ恋とあきらめていた。そんなある日、警察が家にやってきて、その直後セザールの父親があわただしく家を出て行ってしまう…
フランスの俳優リシャール・ベリの監督第2作。このような子供の冒険話はいつ見てもワクワクしておもしろい。フランス版『スタンド・バイ・ミー』という感じ?
ひとつの街で育ったごく普通の男のセザールと、父親を知らないアフリカ系のモルガン、そして親は金持ちらしく、何度も引越しを繰り返してきたという転校生のサラ、この境遇の異なる三人が親友になり、一緒に大人への一歩を踏み出すという非常に心温まる冒険物語である。
この子供たちのバリエーションというのは、現在のフランスやヨーロッパの人種や文化が交じり合うという現状を象徴しているとともに、この主題が一定の文化的背景でのみで成立するというようなものではなく、どこでもある程度普遍的に通用する主題であることも示している。どこの国でも、どんな人種でも子供たちは同じ、子供たち同士はそのような違いの壁を乗り越えて仲良くなるし、大人になるために乗り越えなければならない壁というのも共通しているわけだ。
そん中で、セザールは父親との行き違い、サラは両親の離婚、モルガンは父親がいないという悩みを抱えている。3人は3人とも自分の悩みを深刻に悩み、他の2人の境遇をうらやましいと思っていたりする。そのあたりがほほえましく、子供の心理をリアルに表現してるように見える。
それもそのはず、サラを演じたのはリシャール・ベリ監督の実の娘。この年頃の子供を持つ親として、その心理を表現し、同時に自分の子供の頃の記憶を呼び覚まして作り上げたのがこの作品なのかもしれない。それにしてもこのジョセフィーヌ・ベリは俳優の娘だけあってさすがにかわいいし、男を幻惑する女らしさを見事に演じている。母親は女優のジェシカ・フォルドという人らしい。
そして、リシャール・ベリはこれを15歳半、20歳半、とシリーズ化する計画らしい。そうなると、これは子供の冒険話にとどまらず、どこかでトリュフォーの自伝的作品群に似てきたりするのではないかと想像してしまう。コミカルで味のあるモノローグを披露したセザールが思春期を迎え、青年になって行くにつれてどのように変化して行くのかは非常に楽しみだ。
子供が主役であるだけに、子供向けの御伽噺という印象は否めないが、子供の目線で見れば、スリルあり、冒険あり、友情あり、恋ありと盛りだくさんのエンターテインメントだ。大人も子供の目線に帰ってワクワクしながら楽しみたい作品だと思う。
それにしてもアンナ・カリーナはあんなになってたか… もう60歳も過ぎているから当然といえば当然だが、非常に強烈ではあった。すごく久しぶりに見たという印象があるが、映画にはコンスタントに出演しているらしく、ただ日本でほとんど公開されていないだけらしい。