大いなる休暇
2006/6/29
La Grande Seduction
2003年,カナダ,110分
- 監督
- ジャン=フランソワ・プリオ
- 脚本
- ケン・スコット
- 撮影
- アレン・スミス
- 音楽
- ジャン=マリー・ブノワ
- 出演
- レイモン・ブシャール
- デヴィッド・ブータン
- ブノワ・ブリエール
- ピエール・コラン
カナダ、ケベック州の小さな島サントマリ・ラモデルヌ。以前は漁業が盛んだったが、今は人口125人のほとんどが生活保護で暮らしている。その小さな島に工場建設の話が持ち上がるが、その条件は島に医者がいること、しかし島には15年も医者がいない。そこで島民たちは医者を島に呼ぼうとあの手この手の作戦を開始する…
笑いの質がアメリカよりもヨーロッパを感じさせるコメディ映画。スタッフ、キャスト共にほぼ無名だが、なかなか。
島民のほぼ全員が生活保護で暮らす島、その島に医者を呼ぼうとおじさんたちが頑張るというプロットのアイデアだけで、とりあえず観客をつかんでいる。どこかイギリスの田舎を舞台にしたコメディと共通するような発想がそこにあるように思える。クリケットが登場するというのもそんなイギリスっぽさを助長する。
そして、登場するキャラクターたちもなかなかおもしろい。主人公と言っていいジェルマンはしっかりものだが、他の島民たちはなんとも頼りなく、それが生むドタバタがコメディとしての重要な要素だ。そして医者のクリストファーもかなり抜けたいいキャラクターだ。話としては、都会に疲れた医者が田舎の人々の素朴さに少しずつ魅かれて行くという話になりそうなものだが、彼は最初からこの島が気に入ってしまっている。もちろん1ヶ月たったら帰るつもりではいるのだが、初日からたくさんの患者が来ることも、島の小ささも気に入ってしまっている。しかし、島民たちはそのことに気づいていない。
その島民たちの思惑とクリストファーの感覚のズレとがなんだか変な雰囲気で、コメディとして狙ったおもしろさとは違うおもしろさを生んでいるような気がするし、それがヨーロッパ的な雰囲気を生んでいるのかもしれない。
しかし、まあそこまでといえば、そこまで。のんびりほっこりした気分で笑って見ることが出来はするが、そこまでという気はする。もっとプロットを練れば、もっと観客を感動させることも出来ただろうと思うだけに、少しもったいない。
ども、こういう田舎を舞台にした素朴なコメディというのは好きだ。田舎の人々は確かに素朴だけれど、バカではない。現実的にものを考え、策略をめぐらせ、都会の人をだまそうとする。都会の人は田舎の人が素朴だとバカにしている節があって、その間には常に壁が存在する。しかし人と人とのつながりはその壁を少しずつ低くして、飛び越えられるくらいの高さになる。それは田舎と都会に限らず、互いをどこか別世界の人と考えている人と人との関係の全てに当てはまることだ。
だから、こういうコメディ映画を見ると、なんだか暖かい気持ちになるし、しかもそれが笑いに包まれているというのがいい。癒しと間でいうといいすぎかもしれないが、忙しい生活の中で少し一休みしたいとき、こんな作品を見るのがいい。