マイ・スウィート・ガイズ
2006/8/21
Play it ot the Bone
1999年,アメリカ,127分
- 監督
- ロン・シェルトン
- 脚本
- ロン・シェルトン
- 撮影
- マーク・ヴァーゴ
- 音楽
- アレックス・ワーマン
- 出演
- アントニオ・バンデラス
- ウディ・ハレルソン
- ロリータ・ダヴィドヴィッチ
- ルーシー・リュー
- トム・サイズモア
シーザーとビンスは共にロスのボクシングジムでトレーニングをつむ親友同士。そのふたりにタイソンの前座試合の話が転がり込む。以前は有名だったが今は峠を過ぎた二人は、チャンピオンへの挑戦権を条件に盛り込み、試合会場へのラスベガスへと乗り込むことにする。
ボクシングを題材に愛と友情を描いたスポーツドラマ、それなりにおもしろいが、特筆すべきところはない。
この映画は前半はただひたすらロスからベガスへと車で向かう旅を描いている。とは言っても、その旅に多くのハプニングがあるわけではない。一度ルーシー・リュー演じる尻軽女を拾ってすったもんだあるだけで、後はシーザーとビンスとシーザーの恋人でビンスの元恋人であるグレースの3人がただただ会話をするだけだ。その会話は3人の関係の説明であり、同時に3人がそれぞれ他の2人に抱える感情を言外に潜ませる。その描き方はなかなかうまいが、それが行き着く先、物語の行き先が今ひとつ見えてこないのでなかなかその関係に入り込めない。ただ微妙な関係の3人が話しているだけという感じなので、退屈になってしまったりもする。そのようになってしまうのは、シーザーとビンスの2人が完全に平等に描かれているからだ。どちらが主役というわけでもなく、どちらが脇役というわけでもない。その意味では、この映画の視線はグレースの視線と一致するということになるが、観客にこのグレースの感情や考えが特別に明かされるわけでもないので、なかなかグレースに同一化するのも難しい。
そして、後半はただひたすらシーザーとビンスが殴り合っている。そのボクシング・シーンには迫力があり、観客がそのファイトにどんどん引き込まれていくのもよくわかる。ひとりの観客として2人の試合を見つめればおもしろい。そして、その試合の合間に2人が見る幻覚、これもなかなかおもしろい。
しかし、ここでもやはりシーザーとビンスの2人が完全に平等に描かれているため、興奮することはできない。スポーツで興奮するためには対戦するどちらかに自己を同一化しなければならない。どちらが勝ってもいいというのではどうも入り込んでいけないのだ。
これがこの映画が“微妙”である全ての理由だろう。おもしろくないわけではないのになんだか退屈してしまう。この退屈なところに表れるグレースの感情を読み取って味わえば「大人の」という形容詞をつけたドラマとして成立しはするが、まあそれくらいという感じの作品。