間宮兄弟
2006/9/28
2006年,日本,119分
- 監督
- 森田芳光
- 原作
- 江國香織
- 脚本
- 森田芳光
- 撮影
- 高瀬比呂志
- 音楽
- 大島ミチル
- 出演
- 佐々木蔵之介
- 塚地武雅
- 常盤貴子
- 沢尻エリカ
- 北川景子
- 戸田菜穂
- 岩崎ひろみ
- 高島政宏
- 中島みゆき
- 佐藤隆太
東京の下町に2人で暮らす間宮兄弟、兄の明信はビール会社の研究員、弟の徹信は小学校の校務員。2人は一緒にナイターを見ながらスコアブックをつけたり、夜通しビデオを見たりと仲良く過ごしていた。そんな2人がビデオ店の店員なおみちゅんと小学校の葛原依子先生を呼んでカレーパーティーを開こうと計画するが…
江國香織の同名小説の映画化。指して目を引くところのある作品ではないが、のんびりした雰囲気はいい。
おもしろいといえばおもしろいのだけれど、なんだか物足りない。間宮兄弟の日々の生活にはクスリとさせられる瞬間がいくつもあり、彼らの人柄の温かさも伝わってきて、見ていてほっとすることは確かだ。しかし、それ以上のものはないといわざるを得ない。
この間宮兄弟のような男たちはたくさんいる。別にオタクとかいうわけではなく、ちょっと内気で趣味が他の人と違うというだけ。社会的にはそれなりにちゃんと仕事をし、人とコミュニケーションをとれないわけではないのだが、異性が相手となるとどうもうまく行かない。そんな感じの人たちである。
その人たちがこれまた少し変わった2人の女性と出合ってどう変わるのか、それがこの物語の面白みなのかと思ったら、そういうわけでもないらしい。この作品に登場する人たちは結局最後まで変わらない。いろいろな人がいて、いろいろなものの見方があるということを学びはするが、それでも彼らは変わらないのだ。
登場人物たちはちょっと変わっていて、どこかで観客の意表を突こううとしているという意図が感じられると、それはまったく成功していない。この物語に登場する誰も驚くようなことはしないし、驚くようなギャップも持っていない。平穏な世界に平穏な人たちがいる、小さな驚きやおかしさやギャップはあるけれど、それはあくまでも私たちの日常に散見される範囲を超えるものではないし、日常の中でも小さな驚きの範囲に入るようなものなのだ。
だからこの映画は何か物足りない。映画を観ているというよりはただ日常を覗いているだけという気がしてしまう。
そんな中で存在感を見せているのはドランクドラゴンの塚地と中島みゆきだ。2人とも本職の俳優ではなく、演技というよりはいつもどおりのキャラクターを映画の中で見せているだけだが、その自然な雰囲気がなんだかいい。映画の雰囲気が日常的であるからそれにあっているということなのか、むしろ佐々木蔵之介の演技が大げさに見えるほどに彼らの演技は自然だ。特に塚地の演技からは真摯な真剣さが伝わってくる。それは徹信が何をするにも真面目で一生懸命な正確であるということをよく示し、同時に彼の人柄も表現している。
こんな兄弟が実際にいたらなんだか気持ち悪いが、彼のキャラクターがそれを救っているのだろう。