シャロウ・グレイブ
2006/10/26
Shallow Grave
1995年,イギリス,92分
- 監督
- ダニー・ボイル
- 脚本
- ジョン・ホッジ
- 撮影
- ブライアン・テュファーノ
- 音楽
- サイモン・ボスウェル
- 出演
- ユアン・マクレガー
- ケリー・フォックス
- クリストファー・エクルストン
- キース・アレン
- ケン・スコット
グラスゴーの高級マンションで共同生活を送るアレックス、デヴィッド、ジュリエットの3人はルームメイトの面接を行っていたが、相手を見下してなかなか決めようとしない。そんな中、作家だというヒューゴという男がジュリエットのめがねのかない、4人目のルームメイトになることになったのだが…
次作の『トレインスポッティング』がヒットして一躍有名監督の仲間入りをすることになるダニー・ボイルの初監督作品。イギリスらしい暗さがよい。
ひとつ屋根の下に暮らす男女3人、そもそもどのような関係なのかはわからないが、互いをけなしあっても大丈夫なくらいに仲がよく、バランスの取れた関係がそこにはある。
それがお金がきっかけで崩れて行くわけだが、直接のきっかけは“不公平”である。3人が同じだけ不幸を背負い、同じだけ負担を強いられ、同じだけ幸福を享受できれば、彼らのバランスは崩れず、たとえ極限的な状況にあっても力を合わせることができたのかもしれない。しかし、彼らはそうはせず、一人に重荷を背負わせた。
それによって3人の微妙なバランスは崩れる。いったんバランスが崩れてしまえば、3人、特に男女が混ざった3人の関係は簡単に瓦解し、2人対1人という構図が出来上がり、しかもその構図は1人(ここではジュリエット)の選択によって変化する。その関係の変化がもたらす怖さを外から眺めるというのがこの映画の楽しみ方ということになる。
それはなかなかスリリングな心理ゲームである。金と狂気が絡み合い、それぞれがそれぞれを監視し、いかに金を手に入れて逃げ切るか、全員がそれに向けて他人を利用しようとする。
彼らはそもそも友だちといえる関係ではなかったのか、それとも金が彼らを変えてしまったのか、映画の構成としては金が友情を変化させてしまうということだと思うが、私にはそもそも彼らには最初から友情などなかったような気がする。ただ同じ場所に住み、一緒に騒ぐことができるだけの関係、それを友だちと呼んでもいいが、彼らは最初から自分を犠牲にして他の2人に何かをしてあげるという気持ちはまったくない。そんな関係だからこのような事態を招くのは当たり前のことだといえる。
むしろ、グレスゴーの鼻持ちならないスノッブである彼らをダニー・ボイルは揶揄しているのではないか、ダニー・ボイルはいわゆる「オシャレな」映画を撮っているようで、意外にそれは同時に社会的なメッセージを読み取れるような映画でもあったりする。その彼が描くスノッブな人たちはどこか非人間的で温かみがないような気がする。