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ベストセラー

man-hole

★★★星星

2006/11/9
2000年,日本,109分

監督
鈴井貴之
原案
鈴井貴之
脚本
伊藤康隆
撮影
佐野哲郎
音楽
直枝政広
出演
安田顕
三輪明日美
大泉洋
北村一輝
中本賢
きたろう
田口トモロヲ
小池栄子
preview
 交番勤務の巡査小林は父親も警察官の実直な性格で、ある日パトロール中に女高生がひったくりに会った現場に出くわし、犯人を追い詰め、ついに捕まえるが、被害者の女子高生は何も言わずに消えてしまった。その女子高生の希は札幌にあるデートクラブでバイトをしていた。父親は希が通う学校の教師で、厳しい家庭には空々しい空気が流れていた…
  北海道ローカルの人気番組「水曜どうでしょう」のパーソナリティである鈴井貴之が初監督したファンタジー・ドラマ。主演は鈴井のオフィスに所属する安田顕。
review

 『man-hole』という題名は映画の中で語られる「願い事を書いた紙を流すとその願いがかなう“夢のマンホール”」という都市伝説から来ている。このモチーフは映画の冒頭でも使われ、最後でも使われる重要なものとされているのだが、なぜこれが映画の重要なモチーフとして使われているのかはよくわからない。映画のテーマとも言える“夢”をその都市伝説に仮託したかったということだろうか。
  この作品は、登場する人々のそれぞれの“夢”についての映画であることは確かだ。主人公である警察官の小林正義(なんと名前が正義!)の夢は警察官として正義を守ることである。もう一人の主人公の希の夢は漠としているが、おそらく自分と父親が素直に生きることだろう。そして大泉洋演じるジュンちゃんの夢はとにかく自由に生きることだ。
  ここでおもしろいのは希の父親の存在である。物語を見ていれば、希は実は父親のことが大好きで、その父親が教師という立場に押しつぶされて自分を失っていることに心を痛めていることがわかる。しかも、考えてみれば、それは家族を養うために彼がやむなくしたこのなのである。そこに希は悩む。自身も父親である鈴井貴之の都合のいい夢想ではあるかもしれないが、その関係性は見ていて確かにおもしろい。
  そしてその父親は同時に“ジュンちゃん”の夢をも定めた存在であるということが後にわかる。ジュンちゃんは高校時代に希の父親に反発し、彼を殴って学校を辞めた。そこから彼のある意味ではいい加減な、ある意味では自由な生活が始まったのだ。それは希の父親がその時すでにはまっていたがんじがらめを反面教師とした行動であり、いわば希の父が彼の生涯を決めたともいえるのだ。そしてそれはおそらく彼にとってはよかったのだろう。彼は脱落者でありながら、他人を思いやる心を持ち、決して褒められた生活をしていないにもかかわらず、他人にいやな思いはさせない。物語としては中心にいない彼だが、キャラクターとしては一番魅力的な人物だろう。
  この作品を観始めたときは「なぜ大泉洋ではなく安田顕が主役なのか」と思ったが、このキャラクター設定ならこの配役がまさにはまる。さすがは毎日タレントたちを観ている社長ということろうだろうか。

 そのような“夢”というテーマもあるが、作品全体として物語の流れもスムーズで、かなり展開もあっておもしろく見られる。映像のつくりや役者の演技にはアマチュアっぽさも残るが、大資本を背景にした作品ではなく、北海道としたローカルな環境のインディペンデンとの作品としては、十分な質だろう。鈴井はこの後さらに2本の作品を監督しているが、それらもそれなりにおもしろいのではないかと期待できる。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本90年代以降

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