40歳の童貞男
2006/11/10
The 40 Year Old Virgin
2005年,アメリカ,116分
- 監督
- ジャド・アバトー
- 脚本
- ジャド・アバトー
- スティーヴ・カレル
- 撮影
- ジャック・N・グリーン
- 音楽
- ライル・ワークマン
- 出演
- スティーヴ・カレル
- キャサリン・キーナー
- ポール・ラッド
- ロマニー・マルコ
- セス・ローゲン
- エリザベス・バンクス
大型電気店に勤めるアンディはフィギュア収集やテレビゲームを趣味とする40歳のオタク中年。そんなアンディがある日、仕事仲間にポーカーに誘われ、話しているうちに童貞であることがばれてしまう。仲間たちはアンディに女性経験をさせようとあれこれアドバイスをするのだが…
全米で思わぬ大ヒットとなったコメディ。題名から想像するよりは下品ではなく、どちらかというとハートフルな内容なので安心して見られる。
原題ママの『40歳の童貞男』という題名は強烈だが、内容は意外と普通のコメディである。“Virgin”というのは男も女も恥ずかしいものだが、アメリカでは日本にも増してその意識が強いのではないかと思う。この作品中にも登場するが、高校生くらいで親同伴で避妊講座に出かけるくらいだから、10代で経験するのが当たり前という意識が強いだろう。
もちろん日本でもその傾向はあるが、アメリカにしろ日本にしろなかなか初体験が出来ない人というのはいる。そういう人はやはりそれを回りに隠そうとし、大体簡単に見破られる。
この作品はそれを面白おかしく描きつつ、そんな“Virgin”たちをバカにしているわけではない。彼らはもちろん人間的な欠陥があったりするわけではなく、ただタイミングがなかっただけなのだ。このアンディの場合は努力が足りないというか、本人もあまりそのことに拘泥してこなかったというのもある気がするが、とにかくそんなことはたいしたことではないという意識で作られている。
しかし、たいしたことではないと考えられるのは、その人が当事者(つまり童貞)ではないからであって、本人にとってはやはりたいしたことなのだ。まあ、見る人の大半は童貞ではないだろいうからそういう描き方でいいのだと思うが、今ひとつアンディの煩悶が見えなかったのが残念だ。
童貞について語らせたら日本のみうらじゅんのほうがよっぽど面白いことをいう。
しかし、この映画で面白いのはアンディよりもまわりの友だちだ。みなアンディのために一肌脱ごうとしながら、自分自身も問題を抱えている。アンディのために何かすることはおそらく彼らにとってちょっとの優越感を味わいながら自分を立て直すことなのだろう。セックスは愛に不可欠なものだが、それが全てではない。そんな当たり前のことを彼らは学び続ける。
それは人間という動物がやはりセックスに拘泥してしまうからだろう。そして、それと同時に理性はセックスとは別のところにある愛を求めるからだ。しかし結局のところやはり愛はセックスと一緒にある。愛が先か欲望が先かという不毛な議論とは関係なく、そこには両方がある。
こんな題名にもかかわらず、そんなハートフルなメッセージが最後に残るからこそこんな映画がヒットしたのだろうと思った。でも、多分日本ではそこまで受け入れられないとも思う。