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ベストセラー

ハッカビーズ

★.5---

2006/11/17
I Heart Huckabees
2004年,アメリカ,107分

監督
デヴィッド・O・ラッセル
脚色
デヴィッド・O・ラッセル
ジェフ・バエナ
撮影
ピーター・デミング
音楽
ジョン・ブライオン
出演
ジェイソン・シュワルツマン
ジュード・ロウ
ダスティン・ホフマン
リリー・トムソン
マーク・ウォールバーグ
イザベル・ユペール
ナオミ・ワッツ
preview
 環境保護活動に没頭するアルバートは、森林と沼地を守るためひとつの岩を保護し、詩でその思いを訴えた。悩み多きアルバートはひとりのアフリカ人との偶然の出会いの意味を解き明かしてもらうため、“実存主義的探偵”を雇って自分を調査してもらうことに。その間に大手スーパー“ハッカビーズ”のエリート社員ブラッドが彼の運動に入り込んでくる…
  デヴィッド・O・ラッセル作り上げた哲学コメディ。これは悪ふざけなのか、それとも大真面目な実存的問なのか…
review

 話のスジがあるようでないような不思議な映画である。まずダスティン・ホフマンとリリー・トムリンが演じる“実存主義的探偵”がまったくわからない。彼らの言っていることは哲学的な話っぽくはあるが、哲学的なことを現実にそのまま当てはめようとすると、それはどうもわけのわからないことになる。哲学とはあくまでも考えるための材料であり、生きるための材料ではないから、それが現実の問題をそのまま解決するわけはない。現実の問題を解決するのは哲学ではなくてセラピーだ。だからくだくだと哲学的な(あるいは実存主義的な)話をする彼らはアルバートの問題を何も解決しない。
  これに対して、後半に登場するカテリンは即座に現実の問題に対処する術を教える。それはセラピーではなく逃避だ。現実の問題から眼を背け、あたかもそのような問題が存在しないかのように振舞うことで問題が解決したような気になるわけだ。
  しかしもちろんそれでは問題は解決しない。最終的には自分自身で自分自身を統合しなければ実存主義的な問題は解決しないというわけだ。ならば、最終的には“実存主義的探偵”の元に戻るのかと思いきや、彼らはアルバートの実存的問題の根が両親との関係にあるとして、まさにセラピストのようなことを言い始める。
  このあたりでこの映画のもともとぼやけていた主題はまったく五里霧中の様相を呈する。結局、彼らは何を言いたかったのか、そしてアルバートは何を得たのか。アルバートとトミーが理解しあっていることはわかる。そしてドーンが即座に自分の実存主義的問題を(アーミッシュまがいの格好をすることで)解決したこともわかる。 となると結局、実存主義的問題とは、自分の中の抑圧されていた欲求の発見ということになる。それは実存主義ではなく、フロイト的な意味での無意識の意味ではないのか? あるいはラカン的な意味での対象aの問題ではないのか? それは実存主義なのか、心理学なのか、哲学なのか、そもそもなにが「実存主義」と訳されているのかわからないが、結局抑圧された欲望が問題なのだとしたら、どんな用語を使うかにかかわらず、生の心理に関わる問題であることは間違いない。
  ならば、“実存主義”とかわかりにくい言葉を使わず、普通にやればもっと理解しやすかったのに…と思う。でも、そうするとなんだか安っぽいセラピー映画のようになってしまう気もするし、哲学的に思わせる言葉と大真面目に可笑しなことをしている人たちのギャップという笑いも生まれなくなってしまうから、これはこれでいいのかもしれない。
  でも、あまり面白くはない。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ2001年以降

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