ビッグ・バッド・ママ
2006/12/4
Big Bad Mama
1974年,アメリカ,85分
- 監督
- スティーヴ・カーヴァー
- 脚本
- ウィリアム・ノートン
- フランスシス・ドール
- 撮影
- ブルース・ローガン
- 音楽
- デヴィッド・グリスマン
- 出演
- アンジー・ディキンソン
- トム・スケリット
- ウィリアム・シャトナー
- ロビー・リー
- ディック・ミラー
1930年代のアメリカ南部、娘の一人が結婚することになり、結婚式に出席したウィルマだったが、自分の娘が農場で一生こき使われることが我慢できず、娘二人を連れて酒の密売を生業とする兄と結婚式から逃げ出す。途中、警察に追われてその兄が打たれ、母娘3人で旅を続けることに…
禁酒法時代のアメリカを舞台に女ギャングの活躍を描いたB級アクション。この時代のB級映画としてはなかなかものか。
話の筋としては非常に面白いものだと思う。禁酒法時代というギャング天国のような時代に活躍する女ギャング、しかも娘2人を連れている。最初は兄の酒の密売のあとを勝手に継ぐが、警察に捕まって行き詰まり、まっとうな生活を送ろうとする。しかし、暇をもてあました娘2人がストリップに出演、それを知った母親がそこに乗り込んで、そこにいた男たちか金をもぎ取る。この偶然が彼女たちを犯罪の道へと導き、次には銀行で詐欺を働こうとする。しかし、そこに銀行強盗が現れ、警備員と銃撃戦に。ウィルマたちはその隙を突いて銀行の金を奪い、銀行強盗の一人と逃亡、本格的にお尋ね者となる。あとはギャング映画らしく撃って撃って撃ちまくる。それは痛快。
しかし、やはり所詮はB級映画であり、それなりの面白さでしかない。そんな映画が30年も残っているのは、この映画にお色気要素がふんだんに盛り込まれいているからだろう。30年代に活躍した女ギャングといえば、4人の息子を連れて暴れまわったバーカー一家が有名だが、この作品ではそのバーカー一家をモデルとしながら、息子を娘に変えた節がある。それは、母娘3人に色気を振り回せて観客の歓心を買うためであることは間違いない。
B級映画が後世に残るためには、それがよほど画期的な作品であるか、監督や出演者が後々有名になるか、あとは“エロティック”なものである必要がある。主演のアンジー・ディキンソンは『リオ・ブラボー』などに出演している実力派だが、『課外教授』のようなお色気路線でも有名。このときすでに43歳だが、その美貌には観客をひきつけるだけの魅力があった。
この作品は同時に『俺たちに明日はない』を明らかに引いている。誰もが知っている『俺たちに明日はない』を明示的ではなく引きつつ、お色気満載にすることで、それなりのヒットを記録したといえるだろう。ただ、女性を主人公にするという点では、この時代のウーマンリブの流れにも沿っていたといえる。このウィルマはヌードシーンこそ披露するが、主体的に男に対して自分の肉体を使い、自立した女である。
まあ、こんな作品にそのような思想を読み込むのは考えすぎではあろうけれど、このような映画が撮られた背景には、そんな時代の流れがあったのではないかとは想像できる。