オールド・ボーイ
2006/12/14
Oldboy
2003年,韓国,120分
- 監督
- パク・チャヌク
- 原作
- 土屋ガロン
- 嶺岸信明
- 脚本
- ヒャン・ジョユン
- リン・チュヒョン
- パク・チャヌク
- 撮影
- ジョン・ジョンハン
- 出演
- チェ・ミンシク
- ユ・ジテ
- カン・ヘギョン
- チ・デハン
- キム・ビョンオク
娘の誕生日に酔っ払ったオ・デスは警察から友人に引き取ってもらうが、その直後何者かに誘拐されてしまう。そして彼は何者かに15年間も監禁されることになる…
パク・チャヌクの「復讐三部作」の2作目。原作漫画の理不尽であるがゆえに魅力的なサスペンスを見事に描きあげ、カンヌ映画祭でタランティーノに絶賛を受けてグランプリを受賞した。
理由もわからず15年間監禁される。それだけで映画の舞台装置としては完全だ。この作品では15年という月日をおそらく十数分という短い時間で表現し、出た後こそがこの物語の眼目であることを端的に示している。この導入の仕方には利点と欠点の両方があると思う。利点はもちろん物語のクライマックスである出た後のサスペンスをじっくりと描けるということである。ここに時間を割きながら、監禁の間の彼の行動や精神状態を説明して行くことで物語として破綻の内容に展開している手腕は素晴らしい。
しかし、この監禁されている間の描写の短さがこの作品の弱さにもつながっている。一般的には15年間の監禁という重要な出来事にもっと時間を割き、彼がその時間をどのようにすごし、彼の肉体と精神がどのように変貌し、そして彼の脱出への試みがどのように進行し、そしてそれが彼の精神を支えていたのかということをじっくりと描くことで、観客を主人公と一体化させ、彼の怒りや憎しみを観客が実感できるようにするのが映画の常套手段である。この方法をとったほうが出た後の展開にドライブ感が出て、ぐっと映画に入り込むことができるはずだ。
ただ、そのように監禁の間についてもじっくり描いてしまうと、かなり長い作品になってしまうことは想像に難くないから、どちらかを短くせざるを得ないという考え方もわかる。だが、この完成された作品を見る限り、例えば監禁されている部分に1時間くらいの時間を割いて、全体が3時間近いボリュームになったとしてもまったく飽きない作品になっただろうし、そのほうが見ごたえも段違いになったのだろうと思う。
それに、この映画の終盤、様々なことが明らかになって行く種明かしの部分も少し急ぎすぎているように私には思えた。特に催眠術についてのくだりなどはもう少しじっくりと描いてもよかったのではないか。もちろん時間をかけすぎると肝心の衝撃的なラストが類推されてしまうという怖れもあるわけで、そのために観客に考える暇を与えないようにしたのだろうけれど、それでもなんだかあれよあれよという間に終わってしまった感じがあった。
ここで描かれていること(ネタばれになるので書きませんが、見た人ならすぐにわかるでしょう)については、なんとも言いがたいが、それより思うのは、韓国映画というのはどうしてこうも異常というかあまりに非日常的な出来事を主題にしようとするのかということに疑問がわく。
もちろんこの作品の原作は日本の漫画だし、日本の映画にもそのような傾向があることは否めないが、特に韓国映画ではヒロインが不治の病だったりという展開が多すぎやしないか?
思うに、韓国映画というのは今まさに黄金期であると同時にジャンルが完成されつつある時期なのだと思う。だから作品も玉石混交だし、無理のある設定や展開の作品も多い。それはどこか昭和三十年代の日本にも似ている気がする。スターが主演した作品が多く作られ、今見れば「うそー!」というような作品も多い。しかし、その中で数多くの名作が生まれた。今の韓国映画の中にもそのような感覚がある。この作品は間違いなく数十年後にも残る作品だと思うが。