カーズ
2007/1/6
Cars
2006年,アメリカ,122分
- 監督
- ジョン・ラセター
- 脚本
- ジョン・ラセター
- ドン・レイク
- 音楽
- ランディ・ニューマン
- 出演
- オーウェン・ウィルソン
- ポール・ニューマン
- ボニー・ハント
- ラリー・ザ・ケイブル・ガイ
- チーチ・マリーン
クルマたちだけが生きる「クルマの世界」、若きレーサーのライトニング・マックイーンは権威ある“ピストン・カップ”にあと一歩で手が届くところまで来た。しかしカリフォルニアへの移動の途中、ふとしたことから辺鄙な田舎町に迷い込んでしまう…
ディズニーとピクサーによるアニメーション作品。物語は非常にシンプルだが、そのCGの質には目を見張る。
話はいたって単純で、すべての展開が予想通りといっていい。必ず次の展開に向けたヒントが示され、そしてそのヒントが示すとおりに話は進んでいく。物語としては絵本にするとちょうどいいくらいの話で、それこそ小さな子供が喜ぶ類のものである。だから、物語を楽しもうとしてみても、それはなかなか難しいが、しかしそれだけ単純で思い通りになるだけに引き込まれやすいというのもあって、最後にはすっかりライトニングとラディエター・スプリングスの住人の味方になってしまうのだ。
そんな単純な物語とは裏腹に、CGは本当にすごい。登場人物であるクルマたちに関しては、まあアニメの域を出ないのだが、まず最初のレースシーンの迫力がすごい。これまでのアニメーションではみたことがないリアルなスピード感とスリルを見事に表現し、カメラアングルが自由になるだけに本物のレースよりもスリリングな映像を作り出すことを可能にしている。この要因にはもちろんCG技術の向上が大きいのだが、それとともに百年にわたる映画の歴史の中で培われたショットと編集の技術も生きている。まさに実写とアニメのいいとこどりによってこのレースシーンが作られているといえるのだ。
もうひとつすごいのは風景の緻密さである。道そのものや道端に生えている木、砂地の触感、それらは可能な限り実写に近づけて作られている。特に木にさす光と木を揺らす風の感じなどは非常にリアルで、ついついそっちに見とれてしまう。まあ、見とれてしまっても物語を見失うこともないし、逆に映画の世界に入り込めるということもいえるので、それもまたうまいのかもしれない。
ということで、何も考えずに楽しめばいい映画なのだけれど、ピクサーがディズニー傘下に入っても、まだまだがんばっていると思うのは、退役軍人と老年ヒッピーを隣に住まわせて、毎朝けんかをさせるシーンを入れる(ジミヘンの「星条旗よ永遠なれ」をかける)とか、全員が善人にはならないとか、そういった小さな抵抗があるところであると。
そして、物語自体も完全なる「車社会」であるアメリカを皮肉って、古きよきアメリカに対するノスタルジーを誘うものであるというあたり、車社会=大量消費社会の申し子であるディズニーを揶揄しているのかという気もする。しかし、ディズニーとしてはそれも含めて戦略的にピクサーを利用しているのかもしれないという気もしたりする。ディズニーの映画はやはりうそっぽくていやではあるけれど、ディズニーもやはりかわらねければ観客に飽きられてしまう。ピクサーはそのためのいいアクセントになっているのでしょう。